アメリカ本土最南端の島、キー・ウエスト

まだ、キー・ウエストへ行ったことがなかった頃に、「フロリダ半島からキューバに向かって、コバルト色の海の中を、ひたすら真っ直ぐ走っていくと、キー・ウエストがあるのだ」という話を聞いた時は、どういう意味なのか全く想像できなかった。

マイアミから、国道、US一号線をどんどん南下して、いくつもの橋と島を渡って進んで行く。道路の両側が海、といった細長い小さな島々でも、島の上を走っている時はやはり安心だ。しかし、一番長いものが七マイル(約12キロ)もある橋を何本も渡っている時などは、まるで小船で大海原へ出てきてしまったように、心細くなってしまうのだ。

こうしてフロリダ半島からどんどん離れて、コバルト色の中を100マイル(160キロ)ほど走り、US一号線の終着点にキー・ウエスト島を見付けた時に始めて、以前に聞いた話の意味がわかったのだ。アメリカ本土四八州の最南端、さすがにここまでくると、マイアミへ戻るよりも、キューバのハバナあたりへ行くほうがずっと近い。両側が海、という心細い道路を丸一日もかけて走ってきた後だけに、本当に遠い所へ来てしまったという感じがしたものだ。

1900年代の始め、こんな遠い所へ鉄道を引っ張ってきた、ヘンリー・M・フラッグラーという人がいた。フロリダ半島まで鉄道をひいた彼は、どうせならアメリカの一番南まで鉄道で旅ができるようにしたいと、当時としては無謀ともいえる計画を立てたのだ。容赦なく襲ってくるハリケーンで何度も橋脚を流されながらも、根性で完成させてしまったらしい。しかし、このような苦労の末できた鉄道も、1935年のハリケーンであっけなく崩壊してしまったのだ。

その後、鉄道から車の時代となり、ニューヨークの北から、大西洋岸沿いに南北に走る国道、US一号線を、橋と島づたいにキー・ウエストまでつなぐことになった。しかし、1938年に完成したその橋も老朽化、つい最近、全米に広がる高速道路網の技術で全く新しい橋が完成したのだ。

キー・ウエストの島へたどり着いて、そこからさらに先に広がる海をながめてみると、あのヘミングウェイの小説「老人と海」のイメージそのものだ。実際、ヘミングウエイもここへ住んでいたことがあって、当時の彼の家は、今でもペットの子孫と一緒に、博物館として大切に保存されている。入場料を払って中に入ると、ガイドが当時のカリブ海の生活や、その昔多くの海賊たちがこの海で活躍していた頃の様子などの説明をしてくれた。また、この島には一九世紀の鳥類学者で画家でもあるJ.J.オーデュボンや、戯曲「欲望という名の電車」の作者、テネシー・ウィリアムズなど、有名人の別荘がたくさんある。うらやましいと思いながら気がついた。私の別荘はいつも私の車の後ろにくっついているではないか。今夜はキーウェストにある別荘のオーナーという訳だ。

キー・ウエスト

キー・ウエストヘの橋の中で一番長い、7マイル・ブリッジ。向こうに見えるのは、現在使われていない、旧国道(US)1号線。鉄道の橋はすでに無くなってしまっている。

「老人と海」のイメージそのままのキー・ウエストの海。舟にのって大海原の真ん中に入るように、細い一本の道路や橋を渡ってきた私は、まるで主人公の「老人」の心境だった。

キー・ウエスト島の手前には、いくつものオート・キャンプ場があった。ここが今回の私の別荘地。

実際に自分でハンドルを握って走ってきた、という実感からか、本当に遠い所まできてしまったという感じがした。

この国道、US1号線の標識は、アメリカ合衆国の大西洋側にずっと何千本も立っているのだ。その一番南端の標識が、キー・ウエスト島の入り口に立っていた。

これは最近できた最南端の標識だ。

フラッグラーの「夢の」鉄道がキー・ウエストまで引かれた直後、最南端近くに最高級リゾート、カサ・マリーナ・ホテルができた。現在では、マリオット・カサ・マリーナ・リゾートと呼ばれているが、当時の姿をそのままに残している貴重な存在だ。

ヘミングウェイも夢中になったという、大物の魚を狙うクルーザー。キー・ウエストへの途中の島で見つけた、「マヒマヒ」と呼ばれる魚。大きな物は32ポンド。

キー・ウエストでは、こんな別荘もよいかもしれない。海の上に浮かべている、土地のいらないボート・ハウス式の別荘。

キューバのハバナがすぐそこだ。ハバナ・タバコの葉巻を作って売る店。

アーネスト・ヘミングウェイの家。彼はその後、キューバへ行ったり、カリブ海の島々へ移って行ったのだという。

博物館として保存されているヘミングウェイの家では、当時彼が飼っていた数多くの猫の子孫も一緒に保存されている。

ヘミングウェイの家のガイド。「ここに座って、こうやって小説を書いていたのですよ」。

「スロッピー・ジョー」のように、ヘミングウェイのころからずっと残っているようなバーが何軒もあった。

キー・ウエストの島の中で見つけた、テネシー・ウィリアムズの別荘。彼の死後は手入れもされていないようで、廃墟同然だった。

野生動物の版画で知られるオーデュボンの住んだ家は、オーデュボン・ハウスという博物館になっている。

最南端の近くには、ここからキューバまで90マイルという表示があった。ちなみにマイアミまでは160マイル。

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