エバーグレイズ国立公園とフロリダ半島の自然

オーランド郊外にディズニー・ワールド建設の計画が持ち上がったとき、地元の人の間で一番心配されたのが、エバーグレイズ国立公園の自然破壊問題だった。大部分が湿地帯で構成されているフロリダ半島では、川の流れと同じように湿地帯の水も北から南へと流れている。その水が南の海に流れ出る手前の地域は、自然や野生動物の生態系が、ほとんど大昔のまま残されているので、国立公園に指定されているのだ。ディズニー・ワールドの予定地はちょうどその上流にあたる部分だ。そこから流れ出る水は、まっすぐエバーグレイズ国立公園内に流れ込むということで、ウォルト・ディズニー側でも、フロリダ半島の自然保護のため、その点には特に神経を使ったようだ。

マイアミから車で1時間で、エバーグレイズ国立公園の入り口に到着する。公園内は宿泊設備が非常に限られていて、ここへ行く時には必ずキャンピングカーを後ろに引いて行かなければならないので大変だ。公園内の全てのスポットには駐車場が用意されてあった。そこには湿地帯の自然を観察するための木製の渡り廊下のようなものがあって、そこを歩きながら野生動物や、植物を観察できるようになっている。その木の橋の上から下にいるワニをぼんやり見下ろしながら、ふと、相手の立場になって考えてみた。

車のエンジンの音が聞こえる。「また人間がやってきた」と思うだろう。エンジンが止まり、ドアの開閉の音。その内に何人かの足音が木の橋を伝わってくる。そしてそれが自分達の真上で立ち止まった瞬間、「カシャ!ジーカシャ!ジー」という音が聞こえてくるのだ。しばらくペチャクチャおしゃべりの声がして、やがて足音が遠ざかって行く。あたりはまた大昔からの静けさに包まれるのだ。そしてまたしばらくすると、車のエンジンの音が・・・。彼等にとってはやはり迷惑なことだろう。

夕方日没の前に、エバーグレイズ国立公園の中にあるたった一本の道の終点、フラミンゴという小さな町に到着した。ここは、小さなモーターボートでフロリダ湾に出て、野鳥の姿と日没が同時に見れるという「サンセット・クルーズ」があるところだ。昼間、国立公園にいた無数の野鳥達が、日没と共に沖に点在する小島へ帰って行くのだ。夕日の中を飛んで行く鳥の群れの美しさは、どうにもたとえようのないほどだった。

翌朝、野鳥たちの羽音で目が覚めた私は、野生動物たちの一日の始まりと共に、エバーグレイズを後にしたのだ。

橋の上にいる人のすぐ近くまでやってくる。人間をまったく無視しているかのようだ。

公園内のペリカンもまた、水の中の魚を観察しているのだろうか。

野鳥たちも、すっかり人間になれてしまっている。カメラを構えて、いくら近付いてもまったく知らん顔。

「アリゲーター」と呼ばれる巨大なワニ。まるでここの主だ。

エバーグレイズ国立公園の中の小さな港からモーターボートで沖へ出て、沈んで行く太陽を見ていたわれわれの前を、突然何千羽、何万羽という野鳥たちが通りすぎたのだ。公園内のフラミンゴ沖から。

家路に帰る鳥の中には、こんな所でひと休みしているのもいる。

ここは夕日の美しさでも、世界的に有名な所だ。

フロリダ半島は半島とは名ばかりで、大部分は湿地帯になっている。陸地は非常に限られた部分だけなのだ。というわけで、半島の西から東へ、このようなモーターボートで横断することもできてしまう。

陸地の部分は、リゾート地として開発されている以外は、オレンジ畑になっている所も多い。

多く取れ過ぎたオレンジは、牛のえさになってしまう。

フロリダ半島も、アメリカ・ディープ・サウスの一部だ。サイプレスの木にスパニッシュ・モスがやどり木のように寄生している姿は、いかにもこの地方らしい景色だ。フロリダ半島中央部のサイプレス・ガーデンにて。

エバーグレイズ国立公園の内の北側の湿地帯を抜ける道路の脇で見つけた、本当にアメリカ一小さな郵便局。

ここから出した手紙がちゃんと日本に届いたと聞いた時には、とてもうれしかった。

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