ミシシッピー川河口の町、ニューオリンズ

メキシコ湾からミシシッピー川をさかのぼったところにある巨大なデルタ地帯のど真中の町ニューオリンズは、ミシシッピー川と切っても切りはなせない関係にある町だ。

ミシシッピー川がいかに大きいかを物語る話がある。私の父が以前にこの地方の小学校を訪ねた時の話だが、ここに生まれ育った小学生の中には、まだこのデルタ地帯から外へでたことのない子も多く、そういう子は、地面というのはどこまでいっても平なものだと思っているのだ。そのため、小学校では校庭に日本でいう「築山」が作ってある。先生はその前にいって、「こういう風に、地面から高くなっているのが「山」というものです」と教えていたのだという。

どこまでも平らで巨大なデルタ地帯、そしてここは広大な湿地帯でもある。ちょっと地面を掘ればそこから水が沸き出してきてしまうこの町では、ニューオリンズ特有のジャズ・フューネラルで丁重に弔われた死者は、地面に埋められるのではなく、湿気の少ない地上にほこらのようなものを作って葬られるのだという。

この地方もジョージア州と共に、プランテーション・ホームで有名な所だ。ジョージア州よりも数が多く、しかも建築当時のままの姿で残されている建物も多い。また、湿気の多いこの地方のプランテーション・ホームには「レイズド・コッティジ」スタイルの建物が多いのが特徴だ。またニューオリンズの町でも見られた「アイアン・レイス・グリリング」をテラスにあしらったものも多い。先日、プランテーション・ホームではないが、似たようなおもしろい建物をミシシッピー川河畔でみつけた。ミシシッピー川を上り下りしていた外輪船の船長さんが、陸にあがって暮らすことになった時に建てた家だという。派手な外輪船に負けないほどど派手なデザインで、すぐ前にミシシッピー川が流れている。その家に住んでいれば、一年中船の上で生活していた今までと同じ生活ができるというしろものだった。

また、ここニューオリンズはストリートカー発祥の地のひとつでもある。1835年に最初に作られ、以来何本もの路線が活躍していた。その中の一本が、デザイヤー通りを走るので「デザイヤー線」と呼ばれ、テネシー・ウィリアムスの有名な戯曲『ストリート・カー・ネイムド・デザイヤー』(欲望という名の電車)で世界的に有名になったものだ。坂道の多いサフランシスコでは、今でも市民の足として健在なストリートカーだが、平らなこの町では、前世紀の遺物ストリートカーの活躍の場は残念ながらほとんどなくなってしまった。すっかり持て余されたストリートカーは、結局、実際に走り続けている市電としては世界最古のセント・チャールス線一本だけを残して全部取り払われることになった。ところが、最近観光に力をいれるようになると、やはりデザイヤー線だけは残しておけばよかったという意見が多数でてきた。いまさら悔やんでも始まらないのだが、せめて代役をという訳で、ミシシッピー川に面して「リバーフロント・ストリート・カー」を新しく作ったのだ。外観や車内のデザインは、1800年代の当時のスタイルをまねしてつくってはいるのだが、当時のままの姿で走っているセント・チャールズ線と比べると、やはり伝統、趣の差は大きいと感じてしまう。

ミシシッピー川がメキシコ湾に流れ出る河口はいったいどんなものか確かめたくて、ニューオリンズからヘリコプターでデルタ地帯の湿原の上を飛んでみた。

アメリカ一の巨大な川、ミシシッピー川。ここには、源流近くの丸太の橋から鉄筋の立派な橋まで、無数の橋がかけられている。ニューオリンズの「グレイター・ニューオリンズ・ブリッジ」は、ミシシッピー川がメキシコ湾に流れ出す前にくぐる一番最後の大きな橋だ。

ニューオリンズ市の北側には、レイク・ポンシャルトレインがある。巨大な沼地といったほうがよいこの湖には、世界最長、と世界で2番目の2本の橋が左右にかかっている。対岸が見えないような広い湖ので、まるで橋ごと海の中へ入って行くような感じだ。

ミシシッピー川上空から見た。ニューオリンズ。ジャクソン・スクエアや、セント・ルイス・カテドラル、その後ろにはフレンチ・クォーターも見える。右手前は市長さんの名前をとった「ムーン・ランディング」、その左側が「テゥールーズ・ワーフ」になっている。

英語で「スターン・ホィーラー」または「ポアドル・ボート」、映画で有名になってからが「ショーボート」などと呼ばれる船底の浅い川船外輪船。ニューオリンズはその外輪船が活躍するところである。絶頂期には、船長さん対抗の「外輪船スピードレース」が行われたという。

外輪船の船長さんは、この町ではスターだ。甲板の上の「コラッピー」と呼ばれる蒸気オルガンを引く船長さんに、熱い視線が注がれている。

『トムソーヤの冒険』や『ハックル・ベリー・フィン』などの小説で知られる、マーク・トウェインも外輪船の船長さんをしていたことがある。

「デルタクィーン」「ミシシッピークィーン」といった外輪船がニューオリンズ港に出入りしている。ミシシッピー川支流のオハイオ川まで1ケ月以上の旅ができる船もある。

マークトウェインの時代を再現した外輪船のレースが「デルタクィーン」と「ナチェズ」の間で競われたことがあった。観客も船の上に乗って応援している。

ミシシッピー川のデルタ地帯の真ん中、運河沿いに建ち並ぶ、アンテベリアム・プランテーション・スタイルの建物。

湿地帯の真ん中のお墓は、このようにしないと土葬ができない。ニューオリンズ市内で。

陸にあがった外輪船の元船長さんの家。テラスからはミシシッピー川が見え、ニューオリンズのスターだった頃を懐かしんで、外輪船の船大工さんにつくってもらった。

この地方の生活がいかにミシシッピー川と関わっているかがよくわかる。ニューオリンズ市内の運河に面したプランテーション・ホーム。

ニューオリンズ市内のガーデン・ディストリクトのレイズド・コテイジ・スタイル。

ニューオリンズ市内のタウン・ハウスの室内。ギャリヤー・ハウスのベッド・ルーム。

ミシシッピー川に沿って、湿地帯の中を橋づたいに走るような高速道路を1時間程走ると、ルイジアナ州の州都バトン・ルージュ市だ。州政治の中心都市だが、ミシシッピー川河畔の石油コンビナートで有名だ。遠方の中央の建物が州議事堂。

ミシシッピー川河畔に最近出現した市街電車。『欲望という名の電車』の人気を再現したいようだ。

新しい市街電車は、リバー・フロント・ストリートカーと呼び、車内は昔からのスタイルだ。車掌さんも町の観光ガイドを兼ねているように、お客さんの質問に答えていた。

「ディザイヤー」と小さく見えるこの市電が「ディザイヤー線」を走っていたのだ。『欲望という名の電車』を記念して、フレンチ・マーケットの近くに展示してある。

現在でも走っている最古の市街電車、「セント・チャールス線」。ガーデン・ディストリクトで。

フレンチ・クォーターのミシシッピー川に近い所に、フレンチ・マーケットがある。週末にはディザイヤー線の市街電車のまわりに市民が集まって、フリーマーケットが開かれる。

さすがアンティークの町。フリーマーケットなら掘り出し物を見つけることができるかも知れない。パリの泥棒市場の雰囲気だ。

ニューオリンズの新しい名所は、アメリカ一を誇る「スーパー・ドーム」だ。

スーパー・ドームは、毎年お正月には「スーパー・ボール」が開催されたりして、常に全米の注目を集めている所だ。

ホワイト・クリスマスなどは全く望めないこの地方では、家の外も思い切りデコレーションしてしまう。

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