ジミー・カーターとマーチン・ルーサー・キング

最近の5人の大統領の中で、唯一の民主党出身のジミー・カーター元大統領の人気が、その人道的な政策が再評価されて上昇中とのニュースがある。現在でも元大統領として、OBサミットなどを通し世界的に活躍を続けているようだ。

ジミー・カーターの出身地、ジョージア州でその人気が更に高いのは、いうまでもないことだ。大統領が引退するとたいていその出身地の都市に「記念ライブラリー」を建てて、在職中の功績をたたえる記念品を保存するならわしになっているが、ジミー・カーターの場合も、アトランタに「カーター・プレジデンシャル・センター」を建て、その中に「記念ライブラリー」を収めている。ここもアトランタを代表する新しい名所となっている。カーター・プレジデンシャル・センターを訪ねてみて印象的だったのは、ジミー・カーターがジョージア州知事だった時代から、日本企業の誘致に力を入れていた関係もあってか、このセンター建設に協力してくれたスポンサーや企業を表示してあるところにYKKの吉田工業を始めとする様々な日本企業名が見られることだった。また以前ワシントンD.C.のホワイト・ハウスの見学ツアーに参加した時でも「オーバル・ルーム」と呼ばれる大統領執務室には入れなかった私は、カーター時代のオーバル・ルームを再現してある展示には特に興味があった。

ジミー・カーターが大統領の時代に、彼の出身地、ジョージア州のプレインズを訪ねたことがあった。ワシントンD.C.やアトランタと比べて、全く別世界の印象で驚いたものだった。私は以前からアメリカの片田舎の名もない小さなな町をひとつのテーマとして写真を撮って見たいと思っていたが、プレインズの町全体を見た印象は、田舎町というよりも更に小さな「村」ともいえないような所だったのだ。鉄道の駅前に数軒の古びた建物が残っていて、そこに何十年も昔から全く変わらないと思われる一軒の小さなガソリン・スタンドがあった。そしてジミー・カーター邸は、この数軒の古びた建物から数ブロック離れたこんもりとした森の中にあって、中はよく見えなかったが、通りを隔てた所には、南北戦争時代から何ら変わらないという印象の黒人の住む家も残されていた。

もちろん、アメリカ南部の黒人はずっとその様な家に住んでいたわけではないのだ。アトランタへ戻って、黒人運動でその運動中に暗殺されたマーチン・ルーサー・キング牧師の生家を訪ねた。代々教会の牧師を勤めてきた家系のキング師の家は、アトランタのダウンタウンから、車でほんの5分程の住宅街にある堂々とした建物だった。すぐ近くにキング師を記念するマーチン・ルーサー・キング・センターが建てられており、黒人の権利を守るために公民権運動を行っていた時のキング師の演説の録音テープを始め、ゆかりの品が博物館のように展示されていた。この展示館の前には、マーチン・ルーサー・キング牧師の墓があり、大勢の人々がアメリカ中から訪ねて来ているようだった。ここにやって来る多くの黒人の人々は、お墓の前で必ず記念写真を撮って帰るようだが、私はその人達の実にうれしそうな表情を見て、多くの人々の努力によって、黒人の人々の権利が認められるような時代が確実にきたのだなという実感をもった。

ジミー・カーター元大統領が、ジョージア州知事時代に活躍したアトランタで、カーター・プレジデンシャル・センターの中にジミー・カーター記念図書館がオープンしていた。

ワシントンD.C.のホワイト・ハウスの大統領執務室、「オーバル・ルーム」をジミー・カーターが大統領時代そのままに再現した展示がカーター・プレジデンシャル・センターにあった。

元大統領の弟、ビリー・カーター氏が、プレインズで経営するガソリン・スタンド。

元大統領の出身地南部ジョージア州のプレインズは、このような町だ。

アトランタ市内の住宅街の一角に残されているマーチン・ルーサー・キング師の生家。黒人運動家を代表するキング師をたたえる意味で、最近では建物を永久に保存するために、大々的な補修工事がなされ、またアトランタを訪ねる人々の新しい名所として一般公開もされるようになってきていた。

公民権運動を中心とする黒人運動のリーダーを務めてきたマーチン・ルーサー・キング牧師は、現代アメリカを代表する英雄のひとりなのだ。

まだまだ、マーチン・ルーサー・キング牧師がやり残したことが多いことを物語るかのように、さびしそうな黒人の人が、キング牧師の生家の近くの家のポーチにたたずんでいた。

ここの正式名称を「マーチン・ルーサー・キング・ジュニアー・ノンバイオレント・ソシアル・チェンジ」というように、黒人運動に無抵抗主義を貫き、最後には暗殺されてしまうという結果に終わってしまったが、確かにキング師が残した功績は非常に大きな物があったようだ。マーチン・ルーサー・キング・センターにあるキング師の墓。

お墓の前は、記念写真を撮りたいという人でいつも賑わっている。記念写真を撮り終わってほっとした黒人の人々の顔が印象的だった。

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