モンタナ州

 「ビッグ・スカイ」というニックネームを持つモンタナ州は、人間の住む部分が極端に少なく、多くの自然と、多くの野生動物が主役の座を占めている、とても大きな空を持つ州だ。空が大きいという感覚は、都会のビルの間に見える小さな空を見て生活している人々にとって、もうすでに忘れてしまった景色かも知れない。そんな人はぜひ一度訪ねてほしい州だ。

 州の東半分を占める広大でやや乾燥した大平原「グレート・プレーズ」には、小麦畑や牧草地が広がり、残りの西半分はロッキー山脈だ。そしてこちらのほうには、雄大な高山美を誇る「グレイシャー国立公園」や、ワイオミング州から続く「イエローストーン国立公園」が待ち受けているのだ。

 西部各州には、西部開拓時代の幌馬車隊が通った街道が多く残っていて、そこを中心に開発されていったのだが、モンタナ州は一番北の州ということで、開拓団もあまり通らなかったらしい。そのため開発が遅れて、自然が手付かずで残っているわけだ。

 モンタナ州はまた、「インディアン討伐隊」の任を負ってここへやってきたカスター将軍が率いる第七騎兵隊がインディアンの逆襲にあって全滅したところでもある。そのせいもあってか、現在でもインディアン・パワーが強く、数多くのインディアン・レザベーションが存在する。

グレーシャー国立公園でロッキーの美しさを再確認

 アメリカ大陸を東西に分けるほどのスケールをもつため、アメリカを回っていると、行く先々でいやでもその姿を目にしてしまうのがロッキー山脈。したがって、写真を撮るチャンスもかなり頻繁にある。ところがいざ、ロッキーらしいロッキーの姿を撮影しようと思っても、相手が大きすぎるためか、なかなか絵になる風景に出会えないのだ。カナディアン・ロッキーは、麓との高低差が大きいため、写真にとりやすいのだが、アメリカのロッキーは、どうもうまくいかない。モンタナ州のイエローストーン近くで訪ねたロッキー山脈も、写真になると空のスケールの方が勝ってしまい、山がかすんで見えてしまう。

 なんとか、ロッキー山脈らしいロッキー山脈を撮ってみたいと思っていた私は、まだ一度も訪ねたことのない、モンタナ州の一番北にある、グレーシャー国立公園に行ってみることにした。ここは、ロッキー山脈の一部を国立公園に指定したものだ。

 グレイシャー国立公園に向かう途中、ある地点から高度がどんどん高くなっていく。それにつれて、窓の外にうつる景色もまるでカナディアン・ロッキーのようなものに変化していった。

 1910年に国立公園に指定された、カナダとの国境にまたがって広がるこの国立公園は、50を越す氷河があるということで、グレーシャーと名付けられた。公園内には、氷河とともに、200を越す湖が、まるですりばちの底に水がたまったような姿で点在している。公園内の全ての氷河、全ての湖を見るのには、ひと夏中をこの公園で過ごさないといけないほどの広さだという。

 6月中旬から9月にかけてが、この公園の夏の観光シーズンだ。冬の寒さが厳しいこの公園では、公園へ通じる峠越えの道、ゴーイング・トゥー・ザ・サン・ロードも、六月の終りになるまで、両側が雪の壁に囲まれている。そしてある日、一気に雪がとけて夏がやってくるのだ。

 グレーシャー国立公園近く、分水嶺(コンチネンタル・ディバイド)のある、標高2026メートルのローガン峠を通った時、展望台で周りの風景を撮っていると、野生の鹿が、どうどうと目の前を横切って行くではないか。それも、奈良の公園にいるような、餌づけされたものではない。純粋に野生の鹿だ。大自然の中にいる、本物の鹿を見ることができた私は、妙に新鮮で感動的な気持ちになってしまった。

 グレーシャー国立公園の良さは、カナディアン・ロッキーや他の有名な国立公園のように観光地化されていないことだ。手付かずの山の姿、野生動物の姿が目の当たりに見れるのだ。

モンタナ州は、「ビッグ・スカイ・カントリー」という州のニックネーム通り、やたら空の大きさが目に付く所だ。ミズーラの夕方。

ウェスト・グレーシャーの入り口からグレーシャー国立公園へ入って最初に見えるのが、マクドナルド・レイク。この国立公園で一番大きい湖。

アメリカのロッキー山脈は、写真を撮るアングルが難しい。山並みを撮るためには、かなり標高の高いところまでいかなくてはならないのだ。カナディアン・ロッキーに近いグレーシャー国立公園を東西に走りぬける「ゴーイング・トゥー・ザ・サン・ロード」を登り始めると、前方に高い山脈の頂上がいい感じで見えてきた。

マクドナルド・レイク湖畔の道からゴーイング・トゥー・ザ・サン・ロードは、徐々に急な坂を登る道に変わっていく。時々道路の脇に見晴らし台用の駐車場があり、一休みできる。前方にヒーベンス・ピークの見える見晴らし台。

その名の通り、山肌に岩が目立つロッキー山脈。標高2739メートルのヒーベンス・ピーク。その山肌を見ると、氷河期よりもさらに前に、地球の巨大な力で隆起した様子がうかがえる。

この大自然の美しさを守るためには、日頃の努力も大切だ。

グレーシャー国立公園の西側、ウェスト・グレーシャの入り口。

コンチネンタル・ディバイドになっている、標高2026メートルのローガン峠から、標高2674メートルのクレメンツ・ピークへ登る「ハンギング・ガーデン・トレイル」。このようなトレイルは、6月下旬にならないと、雪解けが終わらず通行できないことが多い。

グレーシャー国立公園の野生動物は、人間をまったく恐れない。マーモット。

ゴーイング・トゥー・ザ・サン・ロードのローガン峠。

ローガン峠では、まるで「写真を撮ってくれ」とでもいわんばかりの鹿が出現。

コンチネンタル・ディバイドの西側、マクドナルド・クリークの水は太平洋側へ流れ込む。

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