アイダホ州

 フライド・ポテトやポテト・チップスの材料として日本にも大量に輸入されているアイダホ・ポテトは、州南部のスネーク・リバーとオレゴン州とアイダホ州にまたがる谷「オレアイダ」地方でとれるものがほとんどだ。その他、ワシントン州にもポテト畑があるが、これら近隣州で採れたポテトも、すべてアイダホ・ポテトと呼ばれている。

 アイダホ・ポテトは、アメリカ国内でもレストランのポテトのメニューには、必ず「フェイマス・アイダホ・ポテト」と書いてあるほどの知名度を誇り、アメリカのポテト市場のほとんどは、アイダホ・ポテトで占められているといっても過言ではない。

 周辺がポテト産地でもあるオレアイダの谷は、深さではグランドキャニオンを上回るという、険しい谷だ。一番深いヘルズ・キャニオンは、谷底まで2,400メートルもあり、北米大陸で一番深い谷といわれている。そしてその谷底に流れるのは、その名の通り、くねくねとした川、スネーク・リバーだ。

乾燥気味の州南西部に対して、州の東部に広がる森林地帯は、州全体の四分の一を占めている。それをもとに、この地域では林業、製紙業が盛んに行われているのだ。また、サンバレーを始めスキー・リゾート地としても一流で、ロッキー山脈に続くアイダホの山々は、フォード元大統領も利用したリゾート地として話題になった。

空から見下ろすポテト畑

 アイダホ・ポテトを日本で一番多く輸入してる企業は、有名な日本マクドナルド社。ハンバーガーを頼むときに、つい一緒に注文してしまうあのフライド・ポテトは、ここ、アイダホから送られているものだ。

 マクドナルド社が日本に進出して二十周年という年、日本マクドナルド社の紹介で、アイダホ・ポテトの故郷を訪ねる機会があった。ポテト畑の大農場主で、「ポテト王」といもいわれるシンプロット氏の指示で、まずはボイシーへ向かう。砂漠のなかにそびえる岩山を越えた所にある小さな町ボイシー。その町の小高い丘の上には、「ポテト御殿」と呼ばれるシンプロット氏の自宅がある。

 多忙なシンプロット氏は、直接私の案内をすることはできない代わりに、三日間自由に使えるヘリコプターと、ベテランパイロットを用意してくれていた。そのうえ、ヘリコプターは、撮影に便利なようにと、特別なドアが付いているハンティング用のもの。ハンティングの時に銃を出す穴からカメラのレンズを突き出せば、撮影しやすいだろうという、心憎い配慮まであったのだ。

 いよいよ上空からポテト畑を見下ろしてみる。砂漠地帯に潅漑用水をまいて作る畑は、スプリンクラーの水が届く範囲を考えて作られているので、まん丸な形をしている。アメリカの国内線の飛行機に乗ってこのあたりを飛ぶときに、はるか上から見たことのあるこの景色は、一度近くで飛んで、撮影したいと思っていたものであった。

 「円の周囲をゆっくりまわって」「思い切り高く上がって」「下で収穫をしているトラクターの近くまで下降して」と、やつぎばやに要求する私に対してパイロット氏は、ここが腕の見せ所とばかりに大張りきり。見るも鮮やかに上昇したり下降したり。後で聞いた話だが、彼はベトナム戦争に行った経歴を持つベテランパイロットで、一人で乗る時は、宙返りでもなんでも思いのままの腕を持っているのだそうだ。今回は、下は大事なポテト畑、一緒に乗っているのはその畑の王様の客と言う事で、彼なりの安全運転をしてくれたらしい。彼の操縦は感心するばかりで、少しの恐怖感も感じなかった。

 見渡す限りポテト畑ということで、地上からの撮影も現地へへリコプターを乗りつけての撮影だ。地上で実際にポテト畑を触ってみて、アイダホ・ポテトのおいしさの秘密を見つけたような気がした。

 砂漠の砂の上に作られているポテト畑は、畑そのものが、まるでアイダホ・ポテトのようにホカホカなのだ。やわらかい地面にやさしく包まれたポテトは、なるほどおいしくて当たり前だ。

州都ボイシーの州議事堂。ボイシーは州最大の都市で、製紙会社のボイス・カスケード社の本社がある町としても知られている。

アイダホ州の州都ボイシーは、日本では「ボイス」と呼ばれることが多いが、地元では「ボイシー」と発音している。

スネーク・リバーに沿った州の南側や、オレアイダ地方は、砂漠に近い「ステップ」とよがれる気候の土地が続いている。この土壌に灌漑で引いた水を引いて、アイダホ・ポテトの産地になったのだ。

オレゴン州との州境、アメリカ一深い谷、スネーク・リバーのジェットボート。

ロッキー山脈の中でも本土最北部のアイダホ州は冬の寒さも厳しい。

スネーク・リバーの、2400メートルもの深い谷はヘルズ・キャニオン国立リクレーション地区になっている。谷底にあったインディアンの絵文字。

この円の中心に潅漑用水が引かれていて、そこからパイプで周囲に水がまかれる。この乾燥した土地と、適度の水分が、アイダホ・ポテトのおいしさの秘密。有名なアイダホ・ポテトの産地、オレアイダのシンプロット農場で。

ヘリコプターで急接近。円形の畑にはポテトの収穫用の大きな農機具とトラックが見える。

さらに近づいてみると、手前の農機具でポテトを掘り起こし、トラックへ積み込んでいたのだ。

アイダホ・ポテトの収穫期が近付く、アイダホ州、オレゴン州、ワシントン州にまたがるオレアイダ地方のポテト畑。円形のポテト畑が地平線のかなたまで続いていた。

地元の人は、太くて大きいアイダホ・ポテトを、「スパッズ」と呼ぶ。

トラックに積み込まれたポテトは、農場内に持ち込まれたこの機械に移され異物を取り除き、別なトラックでフライド・ポテト工場へ運び込まれる。

フライド・ポテト工場では、洗浄した後細かく裁断、箱詰めのまま冷凍されて出荷される。

ルイストンのレストランでついてきた山盛りのフライド・ポテト。地元では「カーリー」と呼ばれている。

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