ネバダ州

 東がロッキー山脈、西は西海岸のカリフォルニア州との州境にあるシエラネバダ山脈に挟まれた「グレート・ベースン大盆地」と呼ばれる広大な砂漠の中にある州がネバダ州だ。年間降雨量が二五四ミリという、アメリカで一番乾燥しているネバダ州は、スペインの探検隊はもちろんアメリカ合衆国が独立してから送り出した探検隊でさえも、入ることを恐れたというほどの所だ。

 乾燥した土地でも育つセイジ・ブラッシュが茂り、時折「ダスト・デビル」と呼ばれる竜巻が砂嵐を呼び起こすネバダの町は、人間が生活する上で、もっとも条件の悪い所。そのせいもあり、金銀銅の産出により多数できたブーム・タウンも、その後産出量が減るにつれ、次々とゴースト・タウンと化した。現在では、逆にそのゴースト・タウンを利用して観光客を呼んでいるところもある。

 金銀銅の産出量が減り、農業などの産業に適していないネバダ州では、苦肉の策として、1931年にカジノを公認、また一定期間州内に滞在すれば、簡単に離婚手続きができる法律もさだめた。その結果、ラスベガスやリノは、アメリカ中から人の集まる場所になったのである。

 このように、土地環境に恵まれないネバダ州は、アイディアによってそれを補い、現在では、アメリカでも有数の観光州としての地位を確立したのだ。

砂漠の真ん中の大都市、ラスベガス

 ネバダの砂漠の真ん中に突然出現する、目もくらむようなネオンの町ラスベガス。いったいどうしてこんな所にこんな町が出来上がったのだろうか。

 砂漠の真ん中に人を集めるための苦肉の策として、ネバダの州政府は、一定期間州内に滞在すれば、ネバダ州法が適用されるという法律を制定した。その売り物になったのが、簡単に離婚ができるという法律だ。それにより、自分の住む州の法律や宗教によってなかなか離婚できない人々は、こぞってこの地を訪れるようになった。

 そこで生じたのが、その一定の滞在期間をどう過ごしてもらうかという問題。砂漠の町で何もすることがなく退屈に過ごしている人々のために、だれでも気軽に時間を潰して楽しめるものはなにかと考えた結果、カジノを公認することになったのだ。

 カジノ事業の成功に伴い、離婚・再婚希望組以外の観光客も大勢やってくるようになったラスベガスやリノでは、そしてそれに付随して、ショー・ビジネスの世界にスポットがあてられるようになった。映画産業が盛んなハリウッドが近いこともあって、この土地では、アメリカを代表するスターによるショーが毎日のように興行されているのだ。

 アメリカではそれぞれの州が、自分達の州の法律で、かなりのレベルまで決定できるシステムになっている。ここネバダ州は、このようなシステムによって、州の活性化がなされているという、顕著な例だろう。

 ところで、ラスベガスが今日のような華やかな姿になり、またそれを維持していくために、なくてはならない重要なものがひとつある。それは1935年に完成した、フーバー・ダムである。

 アメリカ大恐慌のとき、ネバダ州では全国でこぞって行われていた失業対策事業の一環として、コロラド川の治水、砂漠への水の供給、そして電源開発を兼ねた一大プロジェクトを計画した。時の31代大統領、フーバーの掛け声で始まったこのダム計画は見事に成功し、恐慌を無事乗り切るとともに、今日のラスベガスの基礎を築く、重要な役割を果たすことになったのだ。

 ラスベガス近郊に住む50万人近い人々の生活に必要な水も電力も、またここに訪れる人々が利用する水も電力も、そして二四時間ラスベガスを照らし続ける、カジノのネオンサインの電力も、すべてこのダムがまかなっているのだ。

 もしもこのダムが作られていなかったら、ラスベガスもリノも、ただただ砂漠が続くなにもない乾いた土地のまま、訪れる人もない寂しい町になっていたに違いない。

「ストリップ」と呼ばれる、ラスベガス・ブルーバードの大通りには巨大なカジノが立ち並んでいる。カジノ付きのホテルに泊まるのが便利だ。

「ダウンタウンのフレモント・ストリート」。このあたりは、ホテルと一緒ではなく、カジノだけを専門にしている店が多い。

アメリカ西部の中で、もっとも砂漠地帯が多いといわれるネバダ州。そのど真ん中に作られた人工都市がラスベガスだ。アリゾナ州との州境にできたフーバー・ダムから供給される電力と水がなければ、ただのガソリン・スタンドがあるだけの町だっただろう。郊外のハイウェイからも良く見えるダウンタウンのカジノ街。

巨大なカジノが軒を並べるラスベガス・ブルバード。ホテルでのディナー・ショーが始まる時間帯が、このラスベガスのラッシュ・アワーだ。

ラスベガス郊外にある、州立ネバダ大学は、ホテル学科もあり、観光を専門に勉強したい学生が全米から集まってくる。州も、将来のこの町を担う人を育てようと、この大学へカジノの税金なども投入しているという。

カジノへやってくる人の中には離婚手続中という人もいるためプライバシーには人一倍気を使っている。カジノの内部の撮影には特別許可が必要だ。

必要な滞在日数を終え、離婚の手続きが完了すると、すぐ再婚するカップルのために、ウエディング・チャペルも盛況だ。

ラスベガスから少し離れると、この様な果てしない砂漠地帯。ここは真っ赤な岩が多いことから、「バレー・オブ・ファイヤー」と呼ばれる州立公園。年間降雨量254ミリ以下、一年の300日以上が晴天という、アメリカ一乾燥した州だ。

バレー・オブ・ファイヤーにある真っ赤な岩。海底の砂岩が隆起してできたものだ。

砂漠の中でも様々な生物が生きている。ジョシュア・ツリー。

グランド・キャニオンを流れてきたコロラド川をせきとめて作った巨大なフーバー・ダム。ダムの高さは222メートルで、貯水量はアメリカ最大。その水と電力はネバダ州内だけでなく、アリゾナ州、カリフォルニア州、メキシコにまで配られている。

フーバー・ダムで作られた人工湖、ミード湖は、湖岸の長さが1323キロ、352億立方メートルの水をたたえている。

アメリカ大恐慌の時の国家的事業として1935年に完成、フーバー大統領の名前を冠した。

コロラド川。周囲が岩盤層なので、地下に水が吸収されることがなく、ダムには理想の地質。

ラスベガス郊外には砂漠の熱を利用した発電を研究するデザート・リサーチ研究所がある。

デザート・リサーチ研究所のあるラスベガス郊外のボルダーシティー。近くにはカジノやホテルのあるゴールド・ストライクス・インと呼ばれるリゾートもある。

普通、カジノでの撮影は禁止されているのだが、ちょうどハロウィーンの夜ということもあって、仮装している人に限ってということで撮影を許可してもらった。

ブラックジャック。ネバダで一番ポピュラーなゲームで「21」とも呼ばれている。ハロウィーンの夜は、従業員も工夫をこらした仮装で客を待つ。

一番人気の「スロット・マシーン」は、空港のロビーから始まって、ネバダ州のどこへいってもある。

「ルーレット」台の前では、ハロウィーン・バニーに変装した従業員も。

地方の歴史を再現するテーマ・パークがラスベガスにもあった。「オールド・ベガス」と呼ばれる公園で、アリゾナ州の「オールド・ツーソン」の協力を得て作られたものだ。ユタ州の一部だったという、ネバダ州の開拓当時の姿を再現している。

当時西部一帯に作られていた、インディアンから守るための砦も再現されている。

馬車にカメラをセットして旅を続けた人々によって、当時の姿が伝えられている。

ネバダ州は、スペイン領、メキシコ領、モルモン教の州というさまざまな歴史を持っている。そして今でもシェリフ制度が残っている州なのだ。

アメリカ西部の生活を表現した映画「バクダッド・カフェ」そのままのイメージの町が、ラスベガスからリノへ向かう国道95号線沿いにいくつもある。ガソリン・スタンドがあって、小さなモーテルに食堂が一軒。これで一つの村なのだ。

国道95号線沿いで見つけたゴースト・タウンに残されていた、古いアンティーク・ショップ。

国道95号線を走っていた小型トラック。

3輌のトレーラーを引いたトラック。ネバダ州では、オイル・ショックの前までは、州内の高速道路はスピード無制限だった。ちなみにトラックが牽引できるトレーラーの台数も、その州によって違う。

国道を行くトラックを乗り継いで、ヒッチハイクの旅を続ける青年。

ユニークな法律の多いネバダ州。トラック便が多い国道ぞいで良く見かけるのが、州公認の売春宿。「ランチ」とか「ブロッセル」と呼ばれている。

砂漠の真ん中を抜ける高速道路を利用して、ハードな旅を続ける若者。

エイズの影響でかなり不景気風がふいているという、州政府公認の売春宿。

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