人口10万人ナバホ国探訪

 「ナバホ・ネーション」は、アリゾナ州の北東部と、一部ニューメキシコ州、ユタ州にまたがった所にある。アリゾナ州全体の広さの四分の一を占めているナバホ・ネーションは、アメリカ・インディアン最大の人口と、最大の土地を誇るナバホ・インディアンの居留地(レザベーション)なのだ。

 ナバホ・ネーションの「首都」、ウィンド・ロックでは評議会が開催され、自治区内にあるナバホ国立の大学も経営している。居留地内の取材も、アリゾナ州ではなく、ナバホ・ネーションの方に直接に申し込まなければならず、きわめて独立国に近い存在になっているようだ。

 州内に九ケ所ある「ナバホ・トライバル・パーク」、訳して「ナバホ種族公園」もしくは「ナバホ国国立公園」は、歳入のほとんどを観光にたよっているナバホ国の重要な財産。そしてその代表が、有名なモニュメント・バレーだ。

 広大な砂漠の中にそびえ立つ数々の岩は、ほとんどが二億年以上の歴史を持っている。それらはロッキー山脈から流れ出てきた砂などが2千5百万年以上もかかって堆積し、それが盛り上がったり、ひびが入ったり、風化したりしてできもので、グランド・キャニオンのように、谷を削ってできたものとは、全く種類が違う。

 小さな尖っているほうは、スペイン語で「ミテン」または「ビュッテ」、大きくてテーブル状のものは「メサ」と呼ばれている。全部でいくつくらいの岩山があるのかは、ナバホ・ネーションのお役人でも分からないとのことだった。また、このお役人がいうには、ナバホ・インディアンの人々は、宗教上の理由から写真に撮られるのは嫌がるそうなのだ。そこで、特別の場合以外はなるべく撮影しないようにとの厳重な注意を受けた。

 モニュメント・バレーに到着して、広大な景色を前にカメラ・アングルを決めていると突然、どこからともなく馬にまたがり威厳に満ちた顔付きのインディアンの老婆が現れた。あまりのタイミングの良さと絵になる姿に、さっきの注意などすっかり忘れ、立て続けに何枚もシャッターを押してしまった。

 しがらくして一息ついている私の前に、その老婆が近づいてきた。お役人の注意を思い出した私は、何をいわれるのか当惑している私にむかって彼女は、突然大きな声で「マニー!」と一言。なにがなんだか分からない私は、あわててポケットからお札を出して彼女に渡してしまったのだ。

 それにしても、写真を嫌がっている感じがないのでなんとなく変な気がして、今度はしばらく様子を見ることにした。すると彼女は観光客があらわれると、タイミングよく絵になる場所に馬に乗って現れ、カメラにおさまってはお金を貰っているではないか。つまり、すっかり喜んでシャッターを押していた私は、最初から彼女の計画にはまってしまっていたのだ。ころりとだまされた自分が情けなくて、なぜか腹もたたなかった。

 観光収入が大きな財源となっているナバホ・ネーションでは、他の国立公園では絶対に許可されないような撮影も、条件次第ではOKになる場合もある。あの西部劇の名作、ジョン・フォード監督の「幌馬車」も、このナバホ・ネーションの協力のもとで作られた作品だ。

ナバホ・トライバル・パークのひとつ、モニュメント・バレー。左からウェスト・ミテン、イースト・ミテン、メリック・ビュッテ。

アーティスト・ポイントと呼ばれ、数多くの写真や絵が描かれているポイント。左がメリック・ビュッテ、右がイースト・ミテン。

モニュメント・バレーの夕方。インディアンの人々は、左から「ブラアムの墓」「王冠」「キャッスル・ロック」「熊と兎」「駅馬車」と呼んでいる。

2億3000万年前の赤い岩の上に、1億6000年前の堅い岩が乗っている。地下からの圧力の影響で、このような不思議な形が出来上がったのだ。

「トーテム・ポール」と呼ばれるとがったミテンの近くには砂漠が広がっている。後ろにあるのは、テーブル状の「レイン・ゴッド・メサ」(左)と「スピアヘッド・メサ」。

月の砂漠でのオートキャンプ。幌馬車時代のキャンプのように、お互いのキャンピングカーをよせあってキャンプしていた。後ろは、左からウェスト・ミテン、イースト・ミテン、メリック・ビュッテ。

ナバホ・インディアン達は、昔から羊などの家畜をかって生計を立ててきた。独特の方法で織られた羊毛は、敷物や壁掛けになってアメリカ中で親しまれている。放牧する牧場と、中央にあるコラルと呼ばれる羊をいれる囲い。

ナバホ・インディアンの人々の住宅「ホーガン」。土で作られる伝統的なものだ。

子供のころから乗馬に親しんでいる彼等にとって、馬は、大切な交通手段だ。

15年前に始めてモニュメント・バレーを訪ねた時、正面入り口の道はまだ舗装されていなかった。凸凹の道のお陰でエンジンルームに砂が入り、車が故障して立ち往生してしまったことがあった。

放牧された羊達がモニュメント・バレーの中を優雅に散歩していた。

モニュメント・バレーに隣接した街。宿泊施設は、グールディング・ロッジ・ホテルと,KOAオートキャンプ場の2ケ所だけ。

羊毛の織物を作る、ナバホ・ウィーバー。彼女は、観光客相手の写真のモデルも兼ねている。

出来上がった織物は、観光客が通るハイウェイ脇のおみやげ屋にも並べられる。

ナバホ・ネーションの中の「キャニオン・ド・シェイ」と呼ばれる国定公園、ナショナル・モニュメントになっている高さ244メートルのスパイダー・ロック。

キャニオン・ド・シェイの川底。春と夏にしか水が流れない名前のない川だ。紀元1000年頃には、このあたりにもアナサジ・インディアン達が住んでいたという。

「ホワイト・ハウス」というニックネームを持つ、キャニオン・ド・シェイにあるアナサジ・インディアンのクリフ・ドウェリング(横穴式住居)跡。

キャニオン・ド・シェイの谷底には、自然が作った不思議な模様のサンド・ストーンや、インディアン達が入ってきた時に残した絵文字などが残されている。

シナグア・インディアンのクリフ・ドウェリング。フラグスタッフ近くにあるウォルナット・キャニオン・ナショナル・モニュメントで。

このクリフ・ドウェリングは、外敵から身を守るためか、高い崖と、水に囲まれた所に作られていたようだ。

ウォルナット・キャニオンにあった看板。インディアンの住居跡に泊めてもらえればおもしろいのに。

ナバホ・ネーションを出て南側にあるペトリファイド・フォーレスト国立公園。大昔の森が砂漠化、木がそのまま化石になってしまっているところだ。ここでは、できた年代によって色が違う砂岩の層が、まるで絵の具で色をつけたように美しい、ペインテッド・デザートも見ることができる。

ペトリファイト・フォーレストにある、インディアンの絵文字「ニュースペーパー・ロック」。

大昔の大木が化石となって転がっている、ペトリファイド・フォーレスト。

アリゾナ州北東部の角は、アリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド州、ユタ州の州境がまじわう「フォー・コーナー」と呼ばれる地点。ナバホ・ネーションの中にあるこの場所も、アメリカ観光必見のスポットだ。

オーククリーク・キャニオンの美しい景色の中で見付けた教会。チャペル・オブ・ザ・ホーリー・クロス。最近注目を集めているアーティスト・コロニー、「セドナ」の近くにある教会は、この町が評判になる前からここに建っている。

アメリカ中からの観光客でにぎわうフォーコーナー。

フォーコーナーで記念写真。

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