オレゴニアン自慢のオレゴン・コースト

 オレゴン州の中をキャンピングカーを引っ張って旅を続けていると、行く先々で地元の人に、「オレゴン・コーストへはもう行きましたか」という質問をうける。

 私がオレゴンの自然というと、真っ先に思い浮かべるのは、カスケード山脈とその周辺の田園風景で、海岸線についての思い入れはほとんどなかった。質問を受ける度に、どうして地元の人はこれほど海岸線を自慢にしているのだろうと不思議に思ったものだ。

 しかしよく考えてみると、まわりを海に囲まれている日本人にとって海岸線は、ある意味では見慣れている風景だ。大陸を感じさせてくれる大きな山や広大な平野のほうに新鮮さや驚きを感じるのが普通だろう。これが、アメリカの場合は逆で、内陸の海のない所に住む人がほとんど。海岸線の美しさこそが、自然の美しさなのだ。オレゴンの人々が山より海を自慢するのも当然のことなのだろう。それにしても人々の海岸線に対する自信はかなりのもの。いったいどこがほかの海岸と違うのだろうか。

 まずごみが落ちていないのだ。日本にもまだまだ美しい海岸線は残っては入るが、これほどごみのない海岸というのは、どこにもみつからないだろう。

 太平洋岸の町、ティラムックに住む友人の家や海岸線にある彼の別荘を訪ねたりして、地元の人々に接する機会をもつと、彼等がいかに海岸線を大切に思っているかが分かってくる。まるで海岸線に住む人全員の宝物のような愛情をもって、その美しさを保つ努力をしているのだ。

 オレゴン州は、「オレゴン条例」をもうけて、全米でいちはやく空き缶の回収に活路をみいだした州だ。缶ジュースなどを買うときには、1缶あたり5セントの回収料金を前払いし、空缶を回収センターへ持参するとその5セントが戻ってくるというシステムだ。このため、万が一ポイ捨てをする人がいても、それを拾って回収する人がいるので、空缶公害が防げ、また、空缶回収のつでに他のゴミを拾う人も増えることで、ごみの無い州ができあがったわけだ。

 地図で見ると、北から南まで一直線のオレゴンの海岸線だが、実際は、何本もの小さな川が流れ込んでいる。そしてその河口の付近には、小さな漁港が作られて、地元でとれた新鮮な魚を売っているのだ。オレゴンの海岸線の魅力のもう一つはこれ。車で国道を走ってみると、そこここで新鮮な「クラブ・ルイ」とか、「シュリンプ・カクテル」とかサーモンの切り身などを売っていて、おいしさ一杯の楽しいドライブになることうけあいだ。

チーズの名産地、ティラムックの海岸。太陽が西の空に沈むにはすこし早い時間だったが、オレゴン・コーストのスリー・アーチ・ロックあたりの小島が浮き出た感じがいい雰囲気。

ティラムックから北へ、国道101号線を北上した。沖に見える美しい島ヘイスタック・ロックで知られるキャノン・ビーチでは、まるで海の美しさに引き込まれたかのように、海岸線を走るバイクを見つけた。

オレゴン・コーストは州立公園に指定されている部分も多く、ほとんどが自然のままに保存されている。そんな美しさを実感するには、ハング・グライダーで空から見るのが一番だろう。

海岸線には、いくつもの小さな湾がある。ディポ・ベイと呼ばれる小さな湾にある港は、地元の人曰く、「世界一小さな港」だ。もっと小さな港もたくさんあるだろうが、とりあえずは納得することにした。

オレゴン・コーストのサーモン漁が解禁されると、沖はこの通り。大勢の太公望たちが、ボート・トレーラーを牽引してここにやってくるのだ。もちろん漁獲量は制限されている。

自然の海岸線では、海岸で乗馬を楽しむのが最高の贅沢とのこと。

釣り上げたサーモンは、オートキャンプ場で調理。専用の流しも用意されている。

海岸線ぞいに南北に走るコースト・レンジ山脈から太平洋に流れ込むウィルソン・リバー。川の流れに任せながら釣りができる「ウィルソン・リバー・ドリフト・ボート」が売り物。

パシフィック・シティーの海岸でハング・グライダーを楽しんでいた家族。バーベキューを楽しんで帰った跡には、ごみ一つ落ちていなかった。

ウィスコンシン州と肩を並べるほどのチーズの名産地、ティラムック。品質の良さが売り物のティラムック・チーズは、人気急上昇で、最近では原料の牛乳をとる乳牛の数が不足がちとのこと。

オレゴン・コーストの南の方には、日本からの貨物船が入港する、クースベイ港がある。

ティラムック・チーズ工場は、工場見学やファクトリー・ストアも充実。

フォークス氏は、ティラムック・チーズ工場の主売るもするという大工さん。

ティラムックのフォークス氏の家。早朝から仕事が開始されている。

大工の2代目になるフォークス氏の長男を助手に、現場へ向かう準備が始まった。地元の豊富な木材を使って、ログ・ハウスを建てたり、ドーム型の別荘を作ったり。だが楽しい仕事ばかりではないという。

オレゴン・コーストに住むと、自然の大切さが実感できるというフォークス氏。時には「バード・サンクチュアリー」になっている太平洋岸へでかけ、バードウォッチングを楽しむ。

フォークス氏の趣味は音楽。夫婦でピアノの前に座って、家族演奏会が始まった。

音楽一家のフォークス・ファミリー。長女のリサの仕事は、ディズニーランドでの演奏。

フォークス・ファミリーの自宅は、フォークス氏が大工として独立する前に素人の父さんと一緒につくったものだ。台所の窓から。

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