自然と身近に遊べるオレゴン州

 ポートランドから車で一時間、一年中白い雪をかぶって美しく見えるマウント・フッドから南へ続くカスケード山脈と、コロンビア川とその支流は、アウトドア・スポーツの格好の舞台になっている。私もアウトドア・スポーツの気分を味わおうと思い、夏スキーに挑戦することにした。

 キャンピングカーを引っ張って、標高三四二六メートルのマウント・フッドの中腹にあるティンバーライン・ロッジへ。ここはアメリカのオリンピック・スキー・チームの夏の合宿所にもなっている有名な所。さいわい部屋が空いているということで、えっちら引っ張って来たキャンピングカーなどほったらかしで、ロッジに泊めてもらうことにした。

 大恐慌の時に、失業対策の一環として建設されたこの巨大な木造ロッジは、歴史的建築物としても価値あるもの。細部の彫刻などをみても、専門家の彫ったものとは違う、素朴で味のあるものがたくさんあり、当時の人々の人柄が覗けたような気がした。

 翌朝でかけたマウント・フッドの夏スキーは、以外と滑りやすい雪質。なによりカスケード山脈を下にみながらの気分は最高だった。隣で練習しているナショナル・チームのメンバーを横目で見ながら、自分もその仲間のような気になってしまった。

 マウント・フッドでの夏スキーの他にも、さらに南のマウント・バチェラーでの春スキー、サンリバーでの乗馬、コロンビア川での外輪船のクルーズに空撮の旅、テレビドラマ「オレゴンから愛」でもおなじみの、セントラル・オレゴンやオレゴン街道の跡を訪ねる旅など、オレゴン州の旅では、広大な自然を満喫する印象深い思い出がいっぱいだ。

 スポーツとは関係ないが、いかにもオレゴンらしい思い出に、林業の取材がある。スイートホームという町に、オレゴン州の主産業である林業の会社を訪ねた時のことだ。

 朝の九時に、カスケード山脈のある山のふもとで待ち合わせ。山林を案内されながら、伐採の仕事をしている頂上の方へと向かう。途中のレストランで昼食をとっていると、伐採の仕事は三時で終わるので急がなくてはと、案内の人がいうのだ。朝出発して、到着が仕事の終了時間に間に合わないかもしれないという規模の大きさにはいささかびっくりしながらも、カスケード山脈の急カーブを100キロ近いスピードで飛ばす。お陰で時間に間に合って撮影することはできたのだが、急な登りカーブをまったくスピードをおとさずに右に左にぐんぐんすすむそのスリルは、マウント・フッドの夏スキーの比ではなかった。

夕方の雲海の向こうに見えたカスケード山脈のマウント・ジェファーソン。同じカスケード山脈、マウント・フッドの中腹にある、ティンバーライン・ロッジから。

オレゴン州唯一の国立公園、クレーター・レイク。カスケード山脈のカルデラ火山の火口にできたクレーター・レイクは、湖の水面の高さが海抜約2000メートル。水深は約600メートル。

春の山道をキャンピングカーを引っ張って登り、途中雪のために立ち往生したことがあった。苦労の末始めて見たこの湖のブルーは、とても強烈だった。

マウント・フッドの麓にある、トリリアム・レイクは、オレゴンの美しい自然を代表する風景のひとつだ。小さな湖で、周りはクロス・カントリー・スキーのコースにもなっている。大勢の人がやってくるような観光名所ではなく、いつもひっそりとした静けさを保つ所だ。ハイウェイからちょっと脇道に入って車を止めると、眼前にマウント・フットとこの湖が見えてくるのだ。

夏スキーのメッカ、マウント・フッドには、ナショナル・チームの合宿所が作られている。

1929年の大恐慌の際、失業対策として建設された、ティンバーライン・ロッジ。

キャラバン・クラブ仲間と訪ねた時の、マウント・フッドへのハイウェイ。

州南部のクレーター・レイクに近くにあった、大きな納屋を持つ牧場。

夏スキーを楽しめるマウント・フッド。新雪のパウダー・スノーとまではいかないが、意外と滑れる雪質だ。ティンバーライン・ロッジのすぐ裏から、スキー・リフトを乗り次いで行ける頂上では、カスケード山脈の広大な展望も楽しめる。

マウント・フッドから、マウント・ジェファーソンを望む。

ポートランド市街から車でちょうど1時間。冬から翌年の夏までスキーが楽しめる。

マウント・フッドからマウント・ジェファーソン、スリー・シスターズと、3000メートル級の山々が続く。その先にあるマウト・バチェラーは、世界に誇れる一流スキー場だ。

マウント・バチェラーの麓、コロンビア川の支流デシュート川河畔には、オレゴン州最大のリゾート、サンリバー・リゾートが開発されており、オレゴンの自然を楽しむ家族で、一年中にぎわっている。

広大なリゾート内には、自転車専用道路がはりめぐらさているため、自転車はリゾート滞在中の足になっているようだ。観光客は専用の飛行場に降りたったあとはもっぱら自転車で移動する。

サンリバー・リゾートのロッジ。管理センターやホテル、ゴルフ場のクラブ・ハウスの役目も果たす建物だ。周囲の自然との調和を考えた設計だ。

リゾート内を乗馬で回れるコースもある。初心者でも安心なライディング・レッスン。自転車の代わりに馬を利用するのもよさそうだ。

サンリバー・リゾートに近いベンドの「ハイ・デザート・ミュージアム」には、この地方の野生動物や、オレゴン街道の歴史が展示されている。

ワーム・スプリングス・インディアン居留地の中に、インディアン達の自治組織が直接経営する「カニータ」と呼ばれるリゾートがある。インディアン達が利用している温泉を外部の人々にも公開しようというもので、温泉の他に、ゴルフ、テニス、乗馬、オートキャンプなどが楽しめるようになっている。

カニータ・リゾートの目玉は、インディアン達が長年にわたって愛用して来た温泉を利用して作った、温泉プール。混浴だが、全員水着を着用。

カニータ・リゾートでは、訪ねていった私を歓迎してくれる意味で、盛装して、先祖伝来の「セレモニー・ダンス」を披露してくれた。

カニータ・リゾートの近く、コロンビア川支流のデシューツ川あたりでは、リバー・ラフティングが盛んだ。あまりにも流れが急で、白い波がたっていることから、「ホワイト・リバー・ラフティング」とも呼ばれている。2、3回はひっくり返らないとゴールにはたどりつけないようだ。一度ひっくりかえれば度胸がつくらしいが。

デシューツ川の難所。インディアンにだけ許可がおりている、シャケ漁。

居留地には、一般公開しているリゾートの他に、インディアンの伝統文化を子孫に継承するためのサマー・スクールもある。伝統的なテント「ティピー」に泊まりながら夏のキャンプ。

伝統的な漁法で捕ったシャケは、これまた伝統的な方法を使って、スモーク・サーモンになる。サマー・スクールのスモーク・サーモン作りのクラスで。

インディアンの伝統技術、裸馬に乗る方法も、このサマー・スクールで教えてくれる。インディアンの子供達のサマー・スクールで。

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