ノース・カロライナ州

1670年、現在のチャールストンに、イギリス人による最初の入植地ができた。それがこの地方の始まりだ。当時イギリス国王はチャールズ二世、「チャールズ」はラテン語で「カルロス」と発音するらしく、そのカルロスの土地という意味から、この地を「カロライナ」と呼ぶようになったらしい。

東側は、大西洋に面した、海抜0メートル地帯、西に向かうにつれて徐々に高度が上がり、テネシー州との州境の西側で、アパラチア山脈最高峰、2037メートルのマウント・ミッチェルにぶつかるという、変化に富んだ地形の州だ。東西では、気候的にも東京と大阪程の差があるのだ。

ウィンストン・セーレム市があることからも想像がつく通り、タバコの生産ではアメリカ一を誇る州だ。最近のアメリカでのタバコ離れの影響から、この産業も一時の活気は感じられなくなってしまったが、昔のコットン、最近までのタバコの生産で上げた利益で各方面に投資してきた実績からくるそこ力はかなりのものだ。

南部魂の表現として使われる言葉に「ター・ヒール」という言葉がある。これは「地に足が付いた」といった意味で、カロライナの特産品のひとつ、松やにからとるタール、ピッチ、テレピン油のネバネバを靴の底にぬり、戦場でもびくともしなかった事のたとえになっているのだ。

研究学園都市、リサーチ・トライアングル・パーク

ノース・カロライナ州には、三つの都市にまたがる規模の、世界最大の研究所用地を誇る、リサーチ・トライアングル・パークという、研究学園都市がある。

このプロジェクトは、州都ローリーにあるノース・カロライナ州立大学、ダーラムにある私立の名門校、デューク大学、チャペル・ヒルにあるユニバーシティ・オブ・ノース・カロライナ、を三つの核として、一九五四年に三つの大学の間に位置する土地に、自然環境を保護しながら、産学共同の研究都市を作るのを目的として、当時の州知事、ルーサー・ホッジス氏の指導のもとで開発が始まったものだ。

IBMが巨大な研究施設をここへ移す事を決定して、注目を集めたのは、この構想が始まって11年後の1965年のこと。その後、ぞくぞくと研究施設が集まり出して、現在では、世界中の大企業がこの土地に研究所を持っているのだ。その理由は、ここにある名門大学の優秀な人材の確保だ。優秀な人材と一流企業を集めるという、当初の目的の産学共同プロジェクトは見事成功したわけだ。

なにしろ、リサーチ・トライアングル・パーク内は、博士号を持つ人の人口密度が全米一といわれているのだから。

車でこのリサーチ・トライアングル・パーク内の道路を走って見たのだが、広い森の中のドライブで、いったいどこに研究所があるのかわからない。道路標識をよく見ながら走ると、確かに研究所の案内が出ている。しかし、スケールの大きなパーク内の研究所は、車で通るだけでは気がつかないほど奥に、ゆったりと建っているのだ。

この素晴らしい環境の中にはもちろん素晴らしい人材、素晴らしいグループが数多くある。例えば、ノーベル医学賞を受賞したバローズ・ウェルカム社のジョージ・H.ヒッチングス博士とゲートルード.B.エリオン女史。施設としては、アメリカ合衆国の国立環境健康科学研究所、化学産業研究所など。日本の住友電工、大日本インキ、神戸製鋼などの研究所もここにあった。

この地域は、日本との結び付きも深く、ノース・カロライナ州立大学には、「ノース・カロライナ・日本センター」というものまであった。ここでは、学術文化の交流、産業、貿易での結びつきを強めようという活動がおこなわれているのだ。100%州政府の予算で運営されている機関は、全米でもここだけ。所長のシルベスター氏は、日本で暮らした経験もあり、私にも流暢な日本語で話しかけてくれたのだ。

「ここは、東のシリコン・バレーのような存在になりつつあるのですよ」。

3つの大学の中心に建設された、リサーチ・トライアングル・パークのシンボル・マーク。本部の建物の玄関の床で。

イギリスの製薬会社、バローズ・ウェルカム社。広大な森の中を抜けると始めて研究所の建物が見えてくる。

農業化学の会社、BASF社の研究所。まわりに何10もの研究施設が建ち並んでいるとはおもえないほどの自然だ。

住友電工の関連会社、ライトスペック研究所内を特別許可で見せてもらった。

マイクロ・エレクトロニック・センター・オブ・ノース・カロライナ。

道路脇の表示だけが、研究所を探す手掛かりだ。

日本からも数人の社員が派遣されている、ライトスペック研究所。大部分は現地スタッフだ。

州都ローリーも、リサーチ・トライアングル・パークの三角形の頂点のひとつだ。州議事堂の前で見付けた、アメリカ南軍を記念するアンドリュー・ジャクソンの像。

もうひとつの三角形の頂点、チャペル・ヒルにある、名門校「ユニバーシティ・オブ・ノース・カロライナ」のシンボル。オールド・ウェルと呼ばれる古井戸だ。

州都ローリーにあるノース・カロライナ州立の日本センターの館長、ジョン・シルベスターさん。このセンターは、州の予算で運営されている、全米でも貴重な存在だ。

州民の税金で運営されている日本センターは、経費の節約にはかなり気を使っていうようだ。センターの建物の、大きな古い民家を買い取って。

三角形の頂点ダーラハムにある、名門校デューク大学。卒業生の多くがリサーチ・トライアングル・パーク内に就職するという。

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