メンフィスは、ブルースの町

ミシシッピー川に面した町、メンフィスには、ミシシッピー川をテーマにしたテーマ・パークがある。マッド・アイランドという、中洲のひとつをまるごと利用したそのテーマ・パークには、巨大なミシシッピー川の模型が作られているのだ。

そこは、中洲全体が、ミシシッピー川の源流から河口のデルタ地帯まで、実際に水が流れるような精巧な模型になっていて、流域のミシシッピー・バレーに伝わる歴史や文化の博物館も併設されていた。ショー・ボートとか外輪船と呼ばれていた川船も再現してあり、解説はもちろん、この川船の船長「マーク・トウェイン」だ。

そしてここの資料で学んだのが、ブルースの歴史だ。

ミシシッピー川河口のデルタ地帯で始まったディキシーランド・ジャズの音楽が、外輪船に乗って次第に北の方へのぼってきた。やがてたどりついたメンフィスで、黒人達によって、より哀愁のある音楽へと変わっていったのだ。「ブルースの父」W.C.ハンディーは、それまで楽譜に残される事のなかったその音楽を、始めて楽譜に仕上げ、「ブルース音楽」の文化を確立したというわけだ。

彼の家は、ビール・ストリートと呼ばれる、ブルース音楽のライブ・ハウスが何軒も立ち並ぶ一角にあった。そこは、ピストルを打つと、弾が簡単に通り抜けてしまうような細長いワンルーム。彼は、「ショットガン・スタイル」と呼ばれるこの小さな部屋で、市長選挙のキャンペーン音楽としてのブルースを作り、それがこの町を「ブルースの町」として発展させるきっかけとなったのだ。

以前この町に来た時、「ブルース・アレー」という店で、91才になるリトル・ローラ・デュークという、黒人のお婆さんが歌ってくれたブルースを聴いたことがあった。どうしてもその歌声が忘れられず、再び訪ねてみたのだ。ところが訪ねて見ると、もうその店はすでになく、現在の一番の評判は「ルース・プレイス」という店とのこと。彼女の歌を聞きたくてわざわざここまでやって来た私は、なとなくがっかりしてしまったのだが、一応、ミシシッピー川に面した「ルース・プレイス」へ行ってみた。

そこの目玉は6才の天才ドラマー、モモ君。彼の演奏するブルースは、この町一番の人気者だ。そしてなんと、あのリトル・ローラ・デユークお婆さんが、この店で毎日歌っていたのだ。彼女の歌うブルースを聴いていると、前に一度聞いただけの歌なのに妙に懐かしくて、まるで故郷に帰ったような安心感があった。

太古の昔、ナイル川をさかのぼった所に「メンフィス」という都があったという。現在、その名前を受け継いでいるのが、ミシシッピー川河畔の町「メンフィス」なのだ。また、同じミシシッピー川を下った所には、「カイロ」という町もある。

名前の由来は分からないのだが、テネシー州の人々は、ミシシッピー川のなかにナイル川のイメージをオーバーラップしているような所があるようだ。

ブルースのなかに母性的なものが感じられるのも、彼等が、「母なる川、ナイル」を意識しているからなのかもしれない。

ミシシッピー川に面した都市、メンフィス。手前が中洲にできたマッド・アイランド。中洲全体がテーマ・パークになっている。

マーク・トウェインが船長をしていたこともある外輪船。現在の外輪船は、マッド・アイランドの脇から出ていた。

メンフィスは、ミシシッピー川河畔の都市の中では、一番の人口を誇っている。ここは、全ての文化がミシシッピー川を通して育って来たのだ。

マッド・アイランドにあるミシシッピー川の模型の中で見付けたメンフィス。

巨大なミシシッピー川も、模型で見ると一目瞭然だ。

マッド・アイランドで、ミシシッピー川の説明をしてくれる「マーク・トウェイン」。

映画「メンフィス・ベル」の飛行機も展示されていた。

メンフィスは、ダウンタウンのビール・ストリートをブルースの町の目玉として再開発しようとしている。W.C.ハンディーの家や、ブルースのライブハウスなどもあり、夜遅くまでブルースが聞こえている。

ビール・ストリートにあった「ブルースの父」」W.C.ハンディーの像。

「ルース・プレイス」の店にいた、天才ドラマー「モモ」。

「ブルース・アレー」で歌う91才のリトル・ローラ・デューク。

ビール・ストリートにある若者の店、「ラム・ブーギィー・カフェ」。

「ルース・プレイス」の壁にあったデコレーション。

テネシー州もケンタッキー州に負けないほどのバーボンの産地だ。「ラム・ブーギィー・カフェ」で。

ブルースの歴史を感じさせてくれる。「ラム・ブーギィー・カフェ」。

「シュワッブス」は、ビール・ストリートにある、なんでも屋さんだ。

「シュワッブス」のオーナーが、広い店内の品物の説明をしてくれた。

ここの品も物は、まるでアメリカの歴史そのもの。「シュワッブス」で。

1876年から代々経営して来た「シュワッブス」は、食料品以外のものなら何でも揃っている。在庫もそのままとってあるので、店内の様子は、1930年から1950年の様子そのままだ。

レストラン「ザ・ピアー」は、その昔、ミシシッピー川につく船がつながれていたという、桟橋の近くにあった。

ミシシッピー川をのぼりおりする貨物船や、川沿いを走る貨物列車などを見ながら食事ができる「ザ・ピアー」。

「ザ・ピアー」は、以前はミシシッピー川でもとれた「キャット・フィッシュ」を始め、川魚料理が名物のレストランだ。

メンフィスには、世界的なホテル・チェーン、ホリディ・インの本社もある。スタンダード化されたモーテルで、どこでも安心して泊まれるのが人気の秘密。ホリデー・インの初期の客室。

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