オープリーランドとグランド・オール・オープリー

ナッシュビルのライマン公会堂で、1925年から始まったラジオ番組「WSMバーン・ダンス」は、予想以上の大成功をおさめた。これに気をよくした地元のラジオ局WSMーAM650は、思い切って、ナッシュビル郊外に広大な土地を購入、「オープリーランド」というテーマ・パークをオープンしたのだ。公開放送の収録もここで行うことにして、ラジオだけでなくテレビの方にも進出を決定したのだ。中には、公開録音スタジオのオープリー・ハウスと楽しい遊園地があり、現在、カントリー・ミュージックの中心として、全国民に親しまれるようになっているのだ。

放送開始から70年近くもたった現在でも続いているWSMーAM650の番組は、連日ロッキー山脈の東側まで電波を飛ばし続けている。一年間でこのグランド・オール・オープリーのオープリー・ハウスを訪れ、公開録音に参加する人は約百万人。それにラジオでグランド・オール・オープリーを楽しむ人が数百万人以上もいるという。まさに、国民的超長寿番組といえるだろう。その他にも、CATVのTNNで、土曜日の夜に放送する30分番組「ザ・グランド・オール・オープリー・ライブ」も、全米に放送されて人気をとっているし、最近ではFM放送も始めたらしいのだ。いちローカル・ラジオ局が、カントリー・ミュージック番組の成功のお陰で、どんどん成長していったわけだ。

以前、オープリー・ランドで行われるグランド・オール・オープリーの公開録音を見に来た時には、日本からの客ということで歓迎してもらい、特別席としてステージの上、ミュージシャンの後ろに無理やりすわらされてしまった。しかし、ミュージシャンの後ろ側では、顔も見えないし、写真もとれない。他のお客さんとの一体感も味わえなくて臨場感がないのだ。今回はその席は丁重に辞退して、一般の観客席に座ることにした。

9時30分から始まるステージには、ジャック・グリーン、チャーリー・ウォーカーなど、聞いたことのあるような名前のミュージシャンが次々とステージに出きてカントリー・ミュージックを歌う。スポンサーが変わるごとにミュージシャンも変わるシステムだ。カントリー・ミュージックが好きな私は、時が経つのも忘れ、延々12時過ぎまで続くステージを堪能したのだ。

それから、このオープリー・ランドに流れる音楽は、単にカントリー・ミュージックだけではなかったのだ。オープリー・ハウスに併設する遊園地には、もちろんジェット・コースターなどのアトラクション設備もあるが、なにしろ、たくさんステージがあるのが特徴になっている。それぞれのステージの上では、アメリカ国内の、さまざまな種類の音楽が、一日中演奏されているのだ。ブルースあり、ロックンロールありのステージは、まるでコンサートにいったような本格的なもの。ここへくれば、カントリー・ミュージックだけでなく、アメリカの音楽のすべてが理解できるようなしくみになっていたのだ。

たくさんの音楽を聞いて得した気分の私は、いつものように、車の後ろにキャンピングカーを引っ張って、ナッシュビル郊外のKOAキャンプ場に到着した。キャンプ場にいる人々はなぜか早めに夕食をとり、大急ぎで後片付けを済ませている。終わるとすぐに折りたたみのイスを持ってゾロゾロ同じ方向に向かって歩き出すのだ。どこに行くのかと思っていたら、なんとこのキャンプ場内にも、カントリー・ミュージックのステージが用意されているではないか。宿泊客はもちろん無料、キャンプ場のサービスということで、ライブステージが行われていたのだ。思わぬ所でもカントリー・ミュージックが楽しめて、またまた得した気分になったのだった。

カントリー・ミュージシャンにとっても、このグランド・オール・オープリーのステージに立つことは、すごく名誉なことなのだ。

WSMグランド・オール・オープリーのマイクロフォンの前で。ここから全米に放送されているのだ。

グランド・オール・オープリーの、今夜の最初のステージは、「ダラー・ジェネラル・ストアー」の提供だ。

カントリー好きでない人でも十分に楽しめるステージ。変化にとみ、盛り上がりもあるのだ。

オープリー・スクエアダンス・バンドにあわせてダンスを。

フットライトを浴びるミュージシャン。

オープリーランドU.S.A.内にある遊園地。昔からの伝統のメリー・ゴーランドを少し改良、スリルをプラスしてある。

入場料には、オープリー会場への入場料と、遊園地の入場料の両方が含まれる。

オープリーランドU.S.A.の正面入り口。

オープリーランドU.S.A.の人気アトラクション、グリズリー・リバー・ランペイジには長い行列ができていた。コダックがスポンサーだ。

スクエア・ダンスを踊ることを南部の方言で発音するとこうなる。遊園地の中のスクエア・ダンスへの案内看板。

アメリカの田舎の夏祭り、カウンティー・フェアのイメージも再現してある。

カウンティー・フェアに欠かせないのが「コットン・キャンディー」と呼ばれる綿あめ。日本の夏祭りによく似ている。

ぬいぐるみを売っているお店。

カントリー・ミュージシャンそっくりのぬいぐるみも売っている。

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