アーカンソー州

「米どころ」、「温泉街」といえば、われわれ日本人にとっては、なつかしさを覚えて、身近に感じてしまいそうな気がするが、実際は、アーカンソー州に対する日本での知名度はかなり低い。日本だけでなく、アメリカ国内でも地味な州のひとつのようだ。州の北側には、オザーク山脈がゆったりと広がり、のどかな田園風景に囲まれた「田舎」だ。

「アーカンソー米」という米の産地なのだが、ここでとれる米は日本の米とは違う「長粒米」。水田方式とは違って陸稲方式で作られ、味も日本の米とは全く違う。地元でも主食ではなくて、付け合わせの野菜の感覚で食べているものだ。農家の規模もこじんまりとして、輸出するほどの収穫量はないようだ。ここの米は、現在問題になっている、貿易摩擦で自由化を騒がれているカリフォルニア米とはまったく関係ない。

アーカンソー州で、日本と比較できて、アメリカ国内でも有名なものといえば、米よりも温泉だろう。西側にあるホットスプリングスは、ユニークな温泉街として知られていて、健康志向のアメリカ人の若者たちでいつも賑わっている。

その他の産業としては、稲作に加えて大豆の生産、アルミニウムの原料のボーキサイト、石油や天然ガスの産出など。以外と知られていないのがダイヤモンド。アーカンソー州にはダイヤモンド鉱山があるのだ。

アメリカで見つけた温泉街、ホットスプリングス

アーカンソー州には、温泉観光地の「ホット・スプリングス市」と、昔栄えていた温泉街をそのままの姿で保存する、「ホット・スプリングス・ナショナル・パーク」の2つのホット・スプリングスが隣り合わせ存在している。この地域では、62℃もある温泉が、1日に380万リットルも出ているというのだから、凄い。

古くはインディアン達のいこいの場所だったこの場所は、他の温泉リゾートのような、ひとつのホテルが経営するのとは違って、街全体が温泉を中心にして開けているリゾートになっているのだ。1541年に、スペイン人の探検家、フェルナンド・デソートが金鉱を求めてやって来た時に、偶然ここに温泉があるのを発見したのがきっかけで他の湯治客が来るようになり、その後、1832年にはアメリカ合衆国が管理するようになって、世界的に有名になったのだ。

日本の暴力団が温泉街を牛耳った時代があったように、以前はここもギャング団が通いつめて、カジノの建物が建ちならんだ時期があったらしい。現在でもその跡が残っていて、当時の様子を想像することができる。ギャングの本拠地、シカゴから距離的に近いこともあって、彼等の遊び場となっていたのだ。

このように、いろいろな時代を通り過ぎて来た温泉街だが、1920年〜30年当時「バス・ハウス」といわれていた古い建物が最近、国立公園局によって保存されることになり、内外にも手をいれて一般公開されるようになったのだ。「バス・ハウス」が並ぶ通りは「バス・ハウス・ロー」と呼ばれ、この中でも最も重要な史跡となっている。その中の一軒、一九一五年にオープンした「フォーダイス・バス・ハウス」の中を、つばの広い帽子をかぶったパーク・レンジャーが案内してくれた。

この「バス・ハウス」とはいったいなにかというと、最近日本でもやっと定着してきた、アスレチック・クラブのことなのだ。この建物が建てられたのが一九一五年前後、アメリカでは、すでにこの頃からアスレチック・クラブが作られていたのだ。現在スポーツ・クラブで見ることができる、金属製のトレーニング・マシンが、ほとんど同じ形で残っているのだ。もちろん木製だが。シャワー・ルーム、サウナ、マッサージ・ルームなども、ちょっとレトロ調なだけで、なんでもそろっているのだ。

「温泉といえば日本」、と自慢している我々だが、アメリカの温泉は、ただ温泉に入ってカラオケをやってというのから、一歩も二歩も進んでいるようなのだ。それも、何十年も前から。

国立公園になっている、ホット・スプリングス・ナショナル・パークの旧温泉街、「バス・ハウス・ロー」。

大勢の人々が車を連ねてシカゴからやって来た頃。

日本の温泉場のイメージと同じような、ホット・スプリングスの温泉街。アメリカ国内でもユニークなリゾートとして、人気の的。アーカーンソー州の看板になっている。

1900年の始め頃からたち始めた「バス・ハウス」。国立公園今日では、湯治の温泉街の姿を再現しようと努力している。「バス・ハウス・ロー」の案内看板。

現在でも営業しているバス・ハウス。

シカゴのギャング達の遊び場だった、カジノ跡。

フォーダイス・バス・ハウスの中のアスレチック・ジム。

マッサージ・ルームも、今とあまり変わらない。

日本の大浴場のように、ただつかるだけではなく、マッサージをしたり、サウナに入ったりの健康産業といったイメージだ。

1915年には出来上がっていたアスレチック・ジム。アメリカ人の体に対する考えか方は、当時の日本人よりもかなり進んでいたようだ。フォーダイス・バス・ハウスのアスレティック・ジム。

温泉だけでなく、ミネラル・ウォーターの産地でもある。

「マウンテン・バレー・ウォーター」として、全米に売られている。

国立公園に指定された、ホット・スプリングス・ナショナル・パークの「バス・ハウス・ロー」の「フォーダイス・バス・ハウス」。1915年に建てられたバス・ハウスで、アル・カポネのお気に入りだったという。

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