ステファン・フォスター・ストーリー

リンカーンの丸太小屋を訪ねた後、ルイビル郊外のエリザベスタウンにあるオートキャンプ場に滞在していた時のこと。地元の人から、すぐ隣の町バーズタウンで、一九五九年以来、ロングランを続けているミュージカルがあるのでぜひ見に行くよう勧められた。

上演開始以来、今まですでに200万人近い人が見ているという、超ロングランのミュージカルは、アメリカ南部を題材にした有名な曲をいくつも作っている音楽家、ステファン・フォスターをテーマにしたものだった。もちろん使われる音楽は彼自身の作ったものだ。30年以上に及ぶ上演の間には、日本のケンタッキー・フライド・チキンがスポンサーになった時期もあるという。このミュージカルが、毎年夏の間だけ、バーズタウンの野外劇場で週六日間連続上演されてきたのだ。ケンタッキー州の州歌にもなっている、フォスターの代表曲「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」を始め、「オー・スザンナ」「キャンプタウン・レーシス」、フロリダ州の州歌「オールド・フォークス・アット・ホーム」などを使いながら、1849年7月から1850年7月の一年間の出来ごとをまとめた物語。舞台は彼のホーム・タウンのペンシルベニア州ピッツバーグとバーズタウンそしてここルイビルだ。劇場の人がいうには、このミュージカルを見にきた人の三人の一人はもう一度見にくるのだそうだ。この私もその後の旅行でもう一度見にいったのだから、その言葉もまんざら嘘ではなさそうである。ステファン・フォスター・ストーリーを上演している野外劇場の隣は「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム州立公園」。もちろんキャンプ場やゴルフ場もあるのだが、この公園の名物はやはり「フェデラル・ヒル」という丘の上にある、「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」だ。

1846年から1850年の間、ケンタッキー州の北隣、オハイオ州のシンシナティーに住んでいた彼は、この地を去ったあとも、たびたびこの土地をを訪ねていたようだ。1818年に建てられ、従兄弟一家が住んでいた「フェデラル・ヒル・マナー」と呼ばれていた大きな家を訪れたのが1852年のこと。その時の思い出を元に作ったのが、名曲「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」なのだ。それが最近では、この建物そのものの名前までがそうなってしまっている。

彼の従兄弟、ローワン・ファミーは、弁護士の家系で、政治家としても地元の名士だった。その後この家は州政府が買い取り、州立公園となったのだが、毎年十万人近い人が訪ねる観光地となってしまったのだ。南北戦争当時の、すそのひろがったフープ・スカートで案内してもらう家の中には、各所にフォスターの絵がかかっていたり、彼の作曲した楽譜がピアノの上に乗っていたり、あたかもフォスター自身の家のような錯覚をうけるようだ。もっともバーズタウンの町全体が、まるで彼の故郷であるかのように、フォスター一色ではあったが。

ここ、バーズタウン近くで生活していた頃が、彼にとって一番幸せな時代だったようだ。このミュージカルは、その彼の人生の最高の時期を題材にしているもの。1860年、ニューヨークに引っ越してからの彼は、経済状態も悪く、あげくのはてに1864年、事故死という不幸な最後をとげる結果となるのだ。

ルイビルから郊外を抜けて、バーズタウンへ向かって行くと、「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム、15マイル」という案内と、ステファン・フォスター・ストーリーの案内が表示されている。

「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」が正式な州歌として法律で制定されているケンタッキー州。その中でも、バーズタウンはフォスターの町、という印象だった。レストランもこの通り。

「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」のモデルとなったといわれる、フェデラル・ヒル・マナー。1818年に建てられた建物は、現在州立公園として州政府が管理している。

フォスターは、フェデラル・ヒルを訪ねたのがきっかけで、数々の南部の曲を作るようになったともいわれる。

彼のポートレートは、アメリカ合衆国の切手にも登場している。

マイ・オールド・ケンタッキー・ホームの中には、フォスターの肖像画も飾られている。

フォスターが作詞作曲をした楽譜。マイ・オールド・ケンタッキー・ホームのピアノ。

30年以上の間、ミュージカルが上演され続けてきたの野外劇場。「ステファン・フォスター・ストーリー」は、ニューヨークのブロードウェイも足元にもおよばないような、ギネスブック級の超ロングランなのだ。

キャストは、毎年のシーズンによって変わる。すでに200万人以上の人がこのミュージカルを見ているのだそうだ。

ステージのセットは、このすぐ近くに建っている「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」を表している・

全米から集まって来る人の中からオーディションで選ばれた、フォスター役と恋人のジェーン・マクドウェルの2人。息のあった演技を見せていた。

当時、南部のプランテーションで働いていた黒人奴隷も、コミカルな場面での登場だ。

フォスターがお金のために、気が進まない曲を苦しんで作っている姿も表現されている。

フォスターの恋人や、他の女性関係も出てきて、ストーリーを盛り上げる。

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