アパラチア山脈のふところ深く

アメリカ人というのは、産業でも自然でも、自分達の身近なもので他の州と違うと思ったものは、なんでも観光名所にしてしまう天才のようだ。

山あいの地にできた世界最長のアーチ橋、「ニュー・リバー・コージ・ブリッジ」、もともとは生活のために必然的にできたもの。ところが地元の人は、その橋のかかっている川、「ニュー・リバー」の歴史を調べ、北アメリカ大陸で一番古い川だという事実をつきとめ、「東のグランド・キャニオン」という、恐れ多いニックネームまでつけてしまったのだ。おかげで、翌年には「ニュー・リバー・ゴージ・ナショナル・リバー」という、一種の国立公園にまで出世したのだ。

州の歴史保存協会も、国立公園に指定された地域の土地を、国立公園局の土地として取得することにも力を入れており、現在までに、3万エーカー(約3600万坪)を取得しているという。そしてこの国立公園の中に、公園の中を縦断する全長52マイルものトレイルを作ろうという計画もたてているらしい。

全長3030フィート、924メートル、橋から谷そこまでの深さが八七六フィート、二六七メートルという橋では、毎年10月の第3土曜日に、世界中からの「ベース・ジャンパー」と呼ばれる、パラシュートを背負って橋の上から飛び下りる人々、最近人気のゴムひもを体にむすんで飛び下りる「バンジー・ジャンパー」の人々を集めて、「ブリッジ・デー」というお祭りを開催している。いつもは徒歩での通行が禁止されているこの橋も、この日だけは歩いて渡ることができるのだ。また、近くのオーク・ヒルの町では、クラフトや展示会、音楽会、ダンスパーティー、ゲームなど、昔ながらのお祭りも再現、たかがアーチ橋一本だけの所なのだが、観光名所づくりに必死になっているのだ。

もう一つ、ウェスト・バージニアで私が思い出すものはファクトリー・アウトレットだ。最近は日本でもよく聞くようになった言葉だが、その場合は、アメリカの有名ブランドの品物が市価の半額以下で買える店が集まっている、一種のショッピング・センターのようなものを意味している。しかし、私がここで見たファクトリー・アウトレットは、正真正銘のファクトリー・アウトレット。小さな家内工業のような工場で、そこで作ったものをその場で売ってくれるのだ。

この地方の特産品ガラス器の工場で、「セカンド」と称する、「多少難あり」の商品を、日本で買う時の四分の一位の値段で売っている。以前は、ガラス皿のセット、ローソク立て、ワイングラスなど、たくさん買い込んでは丈夫なダンボールを探してに荷造りし、せっせと日本に送り出したものだった。

また、全米の土地の安値番付表を賑わしているのが、北部にある町、フィーリングだ。日本に比べれば、まだまだ安いアメリカの住宅だが、やはり人気の北東部や西海岸の都市はかなりの値段がする。ここフィーリングでは、その三分の一位の値段で住宅が買えるというのだから驚きだ。日本の東京都内の住宅の値段と比べると、十分の一位の値段なのだ。山あいの田舎だとはいえ、美しい自然に囲まれて住宅も安い、アメリカでも貴重な存在だ。

ニュー・リバー・ゴージ・ナショナル・リバー、「国立河川公園」とでも訳すべき川にかかる、世界最長のアーチ橋、1977年に完成したニュー・リバー・ゴージ・ブリッジ。アーチの幅は518メートル。

深い谷底にかかっていた橋の所まで、曲りくねった坂を上り下りしていた時代から比べると、40分以上も時間の短縮になるという。世界最長のアーチ橋、ニュー・リバー・ゴージ・ブリッジは、谷底までの深さがアメリカで第2位267メートル。

下の方にある旧道へ。斜度が8%という急な坂道が延々と続いていた。

このような傾斜地に囲まれているため、ウェスト・バージニアでは、農業の生産が難しいのだ。

西隣にあるオハイオ州との州境となるオハイオ川河畔の町、北部ウェスト・バージニアのフィーリングは、独立戦争当時の要塞でもあった。今日のフィーリングは、河畔の工業地帯として、鉄鋼、スズ、化学陶磁器、ガラス、製紙、タバコ、石炭などの産業の町だ。

住宅の安さで有名な町、フィーリング。オハイオ川を見下ろすように立つ住宅街。

オハイオ川はミシシッピー川の支流だ。古くからのアメリカの工業地帯の中心だった、石炭、鉄鉱石を運ぶ運搬船。

ニュー・リバー・ゴージ・ナショナル・リバーのサンドストーン滝。国立河川公園ということで、自然のままに保存されており、アウトドアスポーツには最適なフィールドがたくさんある。

カットグラスは、ウェスト・バージニアの特産品だ。州内に入ると、工場がたくさんあり、工場見学をしながら、ファクトリー・アウトレットで買い物もできる。

ウェスト・バージニア北部のモーガンタウンでみつけたカットグラスの工場。

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