メイン州

メイン州は、アメリカ合衆国の一番東側で、アラスカ州を除けば、一番北側に位置している州だ。もともと、「メイン州」という名前は、沖合の島に到着したイギリスの探検隊が、本土であるこの土地を「メインランド」と呼んでいたことから始まったもの。しかし当時は、マサチューセッツ州の一部としてだけの存在で、1820年になって、やっと一つの州として独立することができたのだ。

この州は、氷河期に氷河によってつくられた、大小多数の湖が有名。また、海岸地帯も、氷河のつくったフィヨルド地形に縁取られ、全長3500マイル、約5000キロにも及ぶ入り組んだ海岸線をもっているのだ。この美しい海岸線を見るため、また夏の涼を求めるため、全国から観光客が訪れている。

そしてその海に、独特のロブスター・トラップを沈めて、ロブスター漁をしている。最近日本でも、手軽に味わえるようになった、ロブスター。メイン州では、アイダホ・ポテト、ケンタッキー・チキンなどとともに、メイン・ロブスターの名前を、州の名産品の代名詞にしようと、必死の努力をしているのだ。また最近は、ファクトリー・アウトレット、工場直販の町としても有名になってきていて、フリーポートなどの町には、格安ショッピングが目当ての、全国からの観光客が急増しているという。

サマー・スクールを訪ねて

アメリカ本土の中で一番北の州で、思い切り寒い冬のメインを経験するのもいいかも知れないが、やはり、なんといってもメイン州は夏が一番。あのさわやかな季節は、一度経験したらだれでも病みつきになってしまうにちがいない。

毎年、何週間かの夏休みをとってやってくる観光客の一人には、キネバンクポートという海岸に別荘を持つ、ブッシュ大統領も含まれているという。

ここに別荘を持つ人々の中には、せっかく夏の間、日常生活から離れて過ごすのなら、と、サマー・スクールに入学して、なにか新しい体験をしてみようという人も大勢がいる。そんな人達に混じって、メイン州のサマー・スクールを体験してみることにした。

ニューヨークから、大西洋岸ぞいに走る高速道路、インターステイト95号線を一路、ディアー・アイルへ。キネバンク・ポートを抜け、オレゴン州にある町と同じ名前の町、ポートランドも抜ける。州都オーガスタ、大都市バンゴールと過ぎて行くと、小さな島がいくつもならんでいるアカディア国立公園が見えてくる。その近くにある島の一つが、ディア・アイル島だ。

大西洋に面した、深い緑の森の小島に建つ、この「ヘイスタック・マウンテン・アート・アンド・クラフト」サマー・スクールは、織物のクラス、陶器のクラス、版画のクラス、木工のクラス、彫金のクラス、などといった、「ワークショップ」と呼ばれるクラスがいくつもある。それぞれのクラスに、アメリカ各地、世界各地から、著名な講師が招へいされてきているのだ。とはいっても、その講師の人達も、半分はリゾート気分。先生も生徒も同じ仲間といった雰囲気で二〜三週間の夏休みを楽しむ仕組みだ。

芸術家達が集まってくるサマー・スクールでは、できるだけ自由で創造的な環境を維持しようと努力している様子だ。何か問題がおきると、先生も生徒も含めて、全員で議論をする。最終決定は全員同じ一票の投票で。私が参加した時の議題は、「禁止されているペットの取扱いについて」だった。

それぞれのクラスには全て、講師の先生も参加しているのだが、ちょっと覗いただけでは、だれが先生なのかは全くわからない。例えば、陶芸のクラスで、年配の人が先生だろうと思うと話しかけて見ると、その人はただの生徒さんで、実はアメリカでも有名な絵本作家だったりするのだ。

つかのまの経験だったが、芸術家気分を味わった後、今度はインターステイト九十五号線で一路南へ。最近評判のフリーポーと、キッタリーのファクトリー・アウトレットでショッピングだ。有名ブランドの衣料や家庭用品が、日本の市価の4分の1から6分の1の値段だ。芸術にひたった時とは違う自分になって、思い切り買いまくったのだった。

名物ロブスターは、このトラップを海底に沈めて、生け捕りにするのだ。ディア・アイルのストニングトンの漁港で。

海底に沈められるトラップの位置や、所有者を示す「浮き」も大切な道具。

氷河期の氷河に削られて、入りくんだ海岸線を持つこの地方には、自然に恵まれた漁港がたくさんある。ロブスター・トラップを海底に沈める独特な船があったり、夏の間の別荘用のレジャーボートがあったり。秋の紅葉でも有名な場所だ。

ニューイングランド地方の典型的な漁村風景だ。ディア・アイルで、入江を利用した漁港。

サンドイッチ・スタンドのメニューにもロブスターが。

海水でボイルしたロブスターに、溶かしたバターをそえて。

大西洋に面した丘の傾斜を利用して建てられて、ヘイスタック・マウンテン・アート・アンド・クラフトのサマースクール。木造で作られ、周囲の自然ともマッチしている。教室や、講師の泊まるキャビンも、全て渡り廊下でつながっている。

織物のクラスの講師が、生徒を前に、糸の紡ぎ方から始まる、織物の基礎のデモンストレーションをしていた。

紡いだ糸を使って、はた織り機で布にしていく。海岸で日光浴をする代わりに、はたを織る夏休みというのもまた楽しい。

周囲にはレストランなどはあるはずもない。朝昼晩、3食の食事も全てスクール内で。食事で生徒をつっているわけではないだろうが、ここのカニサラダの味は天下一品だった。

ヘイスタックの陶器のクラスでは、プロ顔負けの作品がどんどん作り出されている。ワークショップで作られた作品は、スクールの皆が見られる所で乾燥させていて、みんなできあがりを楽しみにしているようだった。

メイン州ポートランドのウォーターフロント。古くからの港町だったポートランドは、北大西洋の中心漁港として栄えている。

町のイメージも、なんとなくオレゴン州のポートランドとにているような気がする。両方港町だからだろう。実際はこの町の出身者が、オレゴン州に移り住んで、むこうにも同じポートランドという名前をつけたようなのだ。今では向こうのほうがずっと大都市になってしまったが。

ワーズワース・ロングフェロー・ハウス。ヘンリーワーズワース・ロングフェローが少年時代を過ごしたポートランド市内の家。

ロングフェロー・ハウスの庭では、1人の女性がロングフェローの詩を読んでいた。1785年、ロングフェローの祖父、ジェネラル・ペレグ・ワーズワースによって建てられて建物。

最先端を行く「カルバン・クライン」のファクトリー・アウトレット。フリーポートで。

フリーポートでは、私が愛用しているレザーバッグメーカー「コーチ」のファクトリー・アウトレットも見つけた。

24時間オープンしている、直営店まで出現している。

ガラス食器メーカーとしても知られる、コーニング・ウェアのファクトリー・アウトレットの店を、キッタリーの町で見つけた。

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