バーモント州

ニューイングランド地方の一部である、バーモント州だが、ここまで北の方までくると、イギリス文化というよりも、セントローレンス川沿いにカナダに入ってきていた、フランス人の文化の影響の方が強く感じられる。州の名前もフランス語の「バー・モント」(緑の山)からきているのだ。

また、州のニックネームは、そのものずばり「グリーン・マウンテン・ステイト」。遠く深南部から続く、アパラチア山脈の一部、グリーン山脈が州の真ん中を南北に走っているということにも関係しているらしい。

州の東側は、ニューハンプシャー州との州境になっているコネチカット川、西側はニューヨーク州との州境になっている巨大な湖レイク・シャンプレーンと、名前の通り、州全体が、森と湖と山に包まれた、美しい州だ。政治、経済の中心として、オフィス・ビルが建ち並んでいるはずの、州都モンペリエでも、州議事堂のすぐ後ろには、真っ青な山が迫っている。こんなことからも、ここの自然の豊かさが分かるだろう。

北海道と同じような気候で、紅葉の美しさでも知られるバーモント州は、訪れるのなら、秋が一番いいという。私は、この地方特産のメイプル・シロップ、メイプル・シュガーを見るたび、真っ赤に色付くメイプルの木を夢見て、「バーモントの秋」の写真を撮りたいと思い続けていたのだ。

ニューイングランドの美しい村

ある日、アメリカに住む友人から新聞の切抜きが送られてきた。それによると、「パーフェクト・ピクチャーレスク・ニューイングランド・ビレッジ」という町が、バーモント州にあるという。そこは写真家のパラダイスで、どのアングルで写真をとっても、「絵になる」町だというのだ。そしてそのことは、その町が出しているリーフレットにも堂々と書いてあるらしいのである。

いくら自分の町を自慢したいからといって、少し図々しいのではないかと思いつつ、それでもちょっとは期待して、ある夏の日、ラトランドから、その「絵になる町、グラフトン」へ車を走らせて出かけて見た。

日帰りドライブ一日コースの最初の立ち寄り地グラフトンは、歩いて回っても30分もあれば十分といった、小さな村。私は、村一番の大きな建物、オールド・ターバン・ホテルの近くに車を止め、カメラを首から下げて軽い気持ちで歩き始めた。

ところが、カメラのファインダーをのぞいて、構図を決めて写真を撮っていくと、次から次へと絵になる風景が見えてくる。たちまち何本ものフィルムを使ってしい、ふと気がつくと3時間も経っているではないか。

私がニューイングランドに行ったら、是非撮りたかった写真、細長く天にのびた尖塔のある真っ白な教会、冬の深い雪でも、雪下ろしが楽にできるような屋根のある「カバード・ブリッジ」、昔からの生活を続けながら、その家に伝わるものだけを売っているような、小さなアンティークショップ、小さなギャラリー、おとぎ話に出てくるようなかわいい店などすべてが、この3時間で撮れてしまったのだ。

どうしてこのように素敵な村が存在しているのかというと、1800年代の始めに、ウィンダム・ファウンデーションという財団が、村起こしのために、当時の村の姿を保存しようと決め、村中の壊れている建物を修理し、はげたペンキをおとして同じ色に塗り替えたりして、計画は大成功、お陰でここのホテル、オールド・ターバンには、歴代大統領を始め、有名な作家なども大勢泊まりに来るようになったのだ。

その日、想像以上に素敵な村、グラフトンを訪れることができた私は、お陰で、一日のドライブの計画がめちゃくちゃになってしまった。アメリカ最古のスキー・リゾート、ウッドストックを駆け足で通り抜け、州議事堂のある州都モンペリエに到着したのはデーライト・セイビング・タイム、夏時間を使っていたその時期でも、すでに夕方だった。二十五年前、アメリカで始めてスキーをした、思い出の場所、ストーにはとうとう辿り着けずじまいになってしまった。

その後、甘い計画を反省た私は、改めてバーモントへと出直した。それも、夢にまで見た紅葉の真っ盛りの時期にだ。夏のグラフトンも素敵だったが、秋の紅葉の中のグラフトンはまた、格別だ。一日いても退屈しない村で、またまた何本ものフィルムを消費してしまった。この分だと、冬のグラフトンも素敵なのだろう。白い雪が赤い屋根に生えて、きらきら光ったりして。そして春の新緑や花々に囲まれたグラフトン。こんな小さな村なのに、何度来ても決して飽きることがないところのだ。

バーモント名物のメイプル・シロップを売る農家。ラトランド付近で。

村中が絵になる、美しい村グラフトン。

1800年代の始め、ウィンダム・ファウンデーション財団が、人口300人の小さな村グラフトンの保存に乗り出した。その結果、ニューイングランド一の美しい町が出来上がったのだ。右側は、村中に美しい花を届ける花屋。

花屋からさらに奥に入って行った、丘の上に小学校。村の建物に調和させて設計され新築されたもの。

ニューイングランド・スタイル、高い尖塔のある白いペンキ塗りの教会。

1874年に建てられた住宅、ウッドワード・ハウス。

小学校の前には、ミュージアムにもなっている、「ブラック・スミス」という鍛治屋があった。グラフトンの建物は、住宅や教会は白いペンキ、納屋や仕事場の建物は、このような色のペンキが塗られている。

むらの鍛治屋「ブラック・スミス」の側面の壁。

鍛治屋の奥にあった納屋。馬車ごと中にいれる、今でいう、「ガレージ」だ。

鍛治屋の店構え。中も当時のまま保存されていて、博物館になっている。

村の自衛消防団の消防署にも赤いペンキが塗られていた。

この住宅には、部分的に赤いペンキが塗られていた。

グラフトンの村から、いかにもニューイングランドといった響きの村、ロンドンデリーへ向かう途中の小川のほとり。

昔はただの小屋だったのだろうが、今ではペンキできれいに化粧直しをして、かわいい店になっている。グラフトンで。

ロンドンデリーの村でみつけた最新流行の「ファクトリー・アウトレット」の店。地元の名産、メイプル・シロップや、大理石でできた製品が並んでいる。

ニューイングランドの紅葉は、北のほうから始まって、だんだん南へ向かって行く。紅葉の盛りには、オールド・ターバンに宿をとることができない。村のアンティーク店が副業としてやっているB&B(Bed & Breakfast)にとまった翌朝、テラスからみる紅葉。

橋の上に雪が積もると、雪下ろしが大変だ。生活の知恵でできた、「カバードブリッジ」。

カバード・ブリッジからみた景色はまるで絵のようだ。

アンティーク・ショップの前庭は、落葉の絨毯が敷きつめてあった。

紅葉が終り全ての葉が落ちると、今度はそれをかたずける仕事がまっている。この仕事が終ると、まもなく寒い冬がやってくるのだ。

ちょうどグラフトンが一番美しい時期だった。

紅葉の次は、ハロウィがまっている。早くもパンプキンのデコレーション始めた家を見付けた。

ハロウィーンが近づくと、道路脇にパンプキンを売るお店が出現する。中をくりぬいて、「ジャック・オ・ランタン」を作るだけでなく、パイをつくったり、スープを作ったりと、アメリカ人にとっては、昔なつかしい料理の材料にもなるのだ。

グラフトンの村でみつけた、ハロウィーンの準備が整った家。魔法使いのおばあさんが使うほうきを飾って。

夏の間は、のんびりと涼しい風にあたるためのポーチも、ハロウィーンが近付くときれいにデコレーションされるのだ。

秋の収穫を感謝するサンクスギビング・デーのデコレーション。家の表札に収穫したコーンを。

グラフトンの家々は、まるで日本のお正月を向かえるような盛り上がりだ。

ハロウィーン・リースを飾る。

グラフトンの花屋。派手な看板などなくとも、こんな「バナー」を掛けただけで、お客さんがやってくる。

ニューイングランド特有の、ドアの上に半円形の飾りをつけた玄関。

八百屋さえおしゃれにみえてしまう村、グラフトン。

村に一軒のホテル、1801年に建てられた「ザ・オールド・ターバン」。

アンティーク店の看板。古い大きな木を利用したものだ。

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