海のリゾート、アーティスト・コロニー

「アーティスト・コロニー」という響きには、景色のいい自然と明るい太陽、絵になる町並みといったものを感じる。ナンタケ島、マーサスビンヤード島という2つの島とケイプ・コッド、ケープ・アンという2つの半島があるマサチューセッツ州の大西洋岸は、まさにアーティスト・コロニーという形容が当てはまるようだ。

二つの島ではナンタケ島の方が有名だが、マーサスビヤード島で暮らしているドネリー夫妻からの誘いもあって、マーサスビヤード島の方を訪ねることにした。この夫妻の家は捕鯨船を解体して建てたものだというので、ちょっとした捕鯨気分が味わえるかもしれないなどと思いながら、ボストンの南方にある小さな町からフェリーに乗った。

島には絵になりそうなひなびたロブスター漁の漁港などがあったが、夫妻の家は丘の上だという。丘に登ると、その家は周囲が開けた見晴らしのいい草原の上にぽつんと建っていた。まるで大西洋の大海原を捕鯨船で航海しているような風情だ。

アーティスト・コロニーとしてのギャラリーといえば、森のなかに見え隠れしながら点在しているだけだ。自然そのままに近い状態が本当のアーティストには好まれるのだそうだ。

アーティスト・コロニーは半島の方にもある。ケープ・アン半島のグロースターもその1つだ。実はこのグロースターは私の祖父母の思い出の地で、今世紀の始めにボストンに下宿していた祖父母が、夏の間滞在していたのがイースト・グロースターのアーティスト・コロニーだったのだ。ここは当時、新しいアーティスト・コロニーとしてできめていたところだという。そこで祖父母が滞在していたと思しき「ノース・ショア・アート・アソシエーション」というコロニーを訪ねてみたが、当時の記録はもうないという返事が返ってきた。それでも何か分かったら知らせてほしいと思い、名刺を置いてきた。

このアソシエーションの先にはロッキー・ネック・アート・コロニーがあったり、同じ半島の先の方にある町のロック・ポートにも新しく「ロック・アート・アソシエーション」が出来ていた。

このケープ・アンは、1980年頃からホエール・ウオッチング・クルーズで有名になった半島でもある。五月から十月の間は、この半島のグロースター港から沖に出れば、四時間位の間に、四十頭以上のクジラを見ることができるという。鯨がいっぱい見られる季節に、またゆっくりと訪ねたいと思っている。

ケープ・アンの入口の町グロースターのインナー・ハーバーに建つ船乗りの慰霊碑「グロスター・フィッシャーマン」像とグロースターの町並み。

イースト・グロースターのノーズ・ショア・アート・アソシエーションの前から望むインナー・ハーバー。入江の向こうには、ボストンに住む人が夏の間訪れる別荘が見える。

グロースターのインナー・ハーバー。今では捕鯨船の姿はない。

ホエール・ウオッチ・クルーズ全盛のグロースターのインナー・ハーバー。

2階建ての納屋を利用したノース・ショア・アート・アソシエーション。1922年に創立されたアーティスト・コロニーの文化的よりどころとなっている。

2階建てギャラリーには、アソシエーションのメンバーの作品がところせましと飾られていた。たいていは、この地方の海の美しさを描いたものだ。

イースト・グロースターには、ギャラリーが建ち並ぶロッキー・ネック・アート・コロニーと呼ばれる通りもある。

毎週末になると、大勢の人がボストンからこの「ギャラリー通り」に、地元のアーティストの芸術作品を求めてやってくるという。

イースト・グロースターは、1900年代の始めに始まった文字どおりのアーティスト・コロニー。

イースト・グロースターの「ロッキー・ネック・アート・コロニー」と呼ばれるギャラリー通りで見つけたギャラリー。アーティスト・コロニーでは、芸術がビジネスとして成立している。

イースト・グロスターから大西洋に面した海岸の方へ出た。週末に比べ平日は静かだ。通勤電車も出ており、ボストンまでも通える距離なので、別荘を住まいにしている人も多い。

マーサスビンヤード島のロブスター漁の漁村は、典型的なニューイングランドの漁村。ロブスター漁に使う独特の形をした船も多く、絵になる所だ。

ロブスター・トラップで陸揚げされたロブスターを直売する売店もある。とれたてを海水でゆでて食べさせてもらった味は、今でも忘れられない。

このまま絵になってしまいそうだとカメラを向けたら、彼に先を越されていた。

ゆでたてをロブスター用のはさみで割って食べるのだ。

マーサスビンヤード島。嵐の時には、確かに難破船が辿り着きそうな感じだ。何色もの色の壁が連なる崖と砂丘が広がる島の南西側。北東側は静かで落ち着いた面もみせてくれる。遠くに見えるのはゲイヘッドの灯台だ。

ゲイヘッド付近は、大西洋の荒波と風を受けて荒々しさを見せてくれる貴重な自然が残っている。

これが、ドネリー夫妻が見つけた昔の捕鯨船の難破船を解体して建てたという家だ。船底のように床が両側に傾いている部屋があったりして、まるで捕鯨船で大西洋を航海していような気分になった。

家中の材料が難破船で作られているというのだ。

島の南西側の大西洋の風を受ける丘の上に建っている、難破船で作ったドネリー夫妻の家。

  

島の北東側のエドガータウンの方は、穏やかな捕鯨の港が残っていた。

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