ミネソタ州

私がアメリカで最初に使っていた車は、ミネソタ州で登録されたものだった。そのナンバープレイトに、「ランド・オブ・テン・サウザンド・レイクス」と表示されていたことから、ちょうど一万の湖がある州なのかと思っていたら、実は湖の本当の数はだれも知らないのだそうだ。隣のウィスコンシン州は1万5千の湖を持っているというが、こちらもさだかではない。アメリカで一番湖が多い州はミネソタ州だという定説があるということは、もしウィスコンシン州がいっている数が正しければ、ここには1万5千以上の湖がなければならないわけだ。

氷河期に、氷によって削られた地面に水がたまってできた、五大湖を始めとするこれらの湖は、どの程度の大きさのものから湖とするか、またどこまでで一つの湖とするかなどによって数える基準が違ってくるため、数を確定するのが大変難しく、現在でも正確な数字は出ていない。ただ、だいたいの定説としては、両州共に1万2千位ということらしい。そして、このミネソタの無数にある湖の中の一つ、アイタスカ湖から、あの大きなミシシッピー川が流れ出しているのだ。

ミシシッピー川と共に歩んできたミネソタ州は、ダウンタウンもこの川をはさむように発達している。「ツイン・シティー」と呼ばれるこの都市は、川をはさんだ両側に高層ビルが立ち並び、まさしく双子のようだ。

ミシシッピー川の源流とテン・サウザンド・レイクス

ミシシッピー川がメキシコ湾に注ぐ手前の巨大なデルタ地帯にある都市、ニューオリンズ。深南部にあるルイジアナ州は、州全体がミシシッピー川を中心に動いている感じがした。同じく深南部、ミシシッピー州ナッチェズもこの川を上り下りする川船の交通とともに栄えた町だ。

南部テネシー州にあるメンフィスは、ミシシッピー川河畔、最大都市。オハイオ川との合流点での川の色の違いもおもしろい。中西部に入って、ミズリー州セントルイスでは、西部への入り口「ゲート・ウェイ・アーチ」の脇も通り過ぎた。

そして、ここセントポールのあるミネソタ州は、これまで南からさかのぼってきた、ミシシッピー川が生まれる所だ。

セントポールに到着してみると、目の前を流れているミシシッピー川では、町をあげての「リバー・フロント・デー」を記念したお祭りの真っ最中。川船、外輪船のレースが行われていた。川底が浅い所でも走れるようにと、水車を外側に貼り付けただけの船、外輪船は、もともとスピードがでるようなものではないので、競争する姿はなんとなく滑稽で、市民達は大喜びだ。

これまでアメリカ各地でこの川に対する人々の愛情と親しみみたいなものを感じて来た私は、ぜひともその源流までいってみたいという気になってきた。

源流とされているレイク・アイタスカに向かって、ミシシッピー川沿いに走ってみようとしたが川沿いには道もなく、仕方なく小型飛行機で川沿いを飛んでみることにした。

空から見たミネソタ州は、まさにニックネーム通り。大小無数の湖の間を、ヘビのように曲がりくねったミシシッピー川が流れている。やがて源流が見えてきた。、レイク・アイタスカの湖面に近付いて見ると、上空からでも、湖から小さく流れ出す小川が見えた。空から見ている自分がもどかしくなった私は、今度は近くの町、ベミジの空港へ下りて、車で向かうことにした。

レイク・アイタスカ周辺は州立公園になっており、中にはミシシッピー川にかかる最初の橋もある。湖から水が流れ出す所に小さな石が並び、その上を歩けるようにもなっていた。ほんの小さな流れなのだが、これがやがて多くの人々の生活を潤し、心を和ませて行くのかと考えると、なんだかものすごく偉大なもののように見えてきたのだった。

ミネソタ州は、クロスカントリーの本場だ。

ミネソタ州の州都、ミシシッピー川河畔の町セントポールでは、町の前の川で「リバー・フロント・デーズ」のお祭りの真っ最中だった。

リバー・フロント・デーズで行われていた外輪船のレース。スクリューの変わりに、船体の外につけた水車がまわって進む船だ。

「テン・サウザンド・レイクス」のニックネーム通り、ミネソタ州ではどこに行っても湖を見ることができる。ここはセントポール市民に一番親しまれている湖、コモ湖畔のコモ・パーク。

ミネソタ州での一番の人気スポーツは、湖から湖へと渡って進むカヌー。小さなカヌーさえあれば、州内どこへでも移動できる。

ミネソタ川とミシシッピー川の合流点にあるフォート・スネリング砦。

セントポールのフォート・スネリング脇でカヌーを試乗する人。

河畔の町、ミネアポリスにあるIDSセンターの屋上から、市街地のオフィス街の向こうに見えるミシシッピー川、セント・アンソニー港付近。

州内のいたる所にある湖。「テン・サウザンド・レイクス」というニックネームの通り、大小一万以上の湖があるのだ。ここは、ミネアポリスのダウンタウンのオフィス街に一番近い湖、レイク・ハリエット。

ミネアポリスの住宅地の真ん中にあるレイク・ハリエットは、週末には大勢の市民で賑わう。湖の外周を一周するサイクリング・ロードは、家族連れに大人気だ。

レイク・ハリエットのサイクリング・ロードは、三輪車はもちろん、ペットの散歩道としても最適。

週末を釣で過ごす人のためにつり専用のスペースも設けられている。レイク・ハリエットにて。

ミネアポリスの西郊に、ロングフェローの詩にもうたわれた、レイク・ミネトンカがある。この湖も、ボート遊びや自転車コースなど、市民の遊び場として人気だ。

ミネハハ・フォールも、ロングフェローの詩で有名な所。

ミネアポリス市の正面にかかる、国道52号線がミシシッピー川にかかる橋と、手前のグレート・ノーザン鉄道の走る鉄橋、セント・アンソニー・フォールスは、夕日の名所。対岸は「セント・アンソニー・メイン」と呼ばれるレストラン街。

ミシシッピー川の源流、レイク・アイタスカ。上の方に見える、小さな小川が、ミシシッピー川の第一歩。アメリカ大陸を西と東に分ける巨大な川も、こんな小さな流れから始まっているのだ。

これがミシシッピー川にかかる最初の橋。川下に行くにつれて巨大になる橋も、最初はこれが始まり。ミシシッピー川を身近に感じさせる。

小石のならぶ向こう側が、レイク・アイタスカ。この小石から始まって、メキシコ湾までの4107kmがミシシッピー川。

ミネアポリスから小型飛行機にのって、レイク・アイタスカを訪ねるフライトの途中で見つけた町、セント・クラウド。このあたりにくると、すでに巨大な川の面影が感じられる。

ミシシッピー川を歩いて渡ったと自慢するために、何度も行ったり来たり。

源流に近いこのあたりは、川幅もまだ狭く、ヘビのように曲がりくねっている。上空から川を追いかけて飛んでいっても見落としそうな位大きくまがっている。

レイク・アイタスカへのフライトの途中で見つけたミネソタの典型的な農家。コーン、ビーツ、乳製品、豚、小麦、ターキー、などがミネソタの特産品。

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