ウィスコンシン州

東側にミシガン湖、北側にスペリオル湖、そして西側にはミシシッピー川と、州の三方を水に囲まれているこの州は、内陸部でも全部で1万5千以上の湖があるという。州名の「ウィスコンシン」もインディアンの言葉で「水の集まる所」という意味で、氷河期に作られた多数の湖とそれをつなぐ何本もの川によって作られていた、潤いのある州だ。この水源と、牧草の成育に適した寒冷な気候を利用して発達したのが、酪農。気候が似ているためか、スイスやオランダからの移住者たちが定着することが多かったウィスコンシン州は、彼等の長年の努力の結果、現在、酪農王国として全米の乳製品のかなりの割合を生産しているのである。

そしてウィスコンシン州がアピールするもう一つの特産品は、アメリカを代表するビールの生産だ。こちらはドイツ系の移民者が中心になって行われてきたもので、ミシガン湖畔の都市、ミルウォーキーはおいしいビールの産地として、世界的にも三本の指に入るほどの規模を誇っている。

また、身近に感じられるところでは、日本のキッコーマン醤油のアメリカ最初の工場が作られた所が、このウィスコンシン州にあるという。ビールの醸造技術が醤油の製造技術の理解に役立つということで、技術指導がやりやすかったのが、ここに工場を建てた理由といったところだろう。

ビールとミルクのミルウォーキー

「ミュンヘン・サッポロ・ミルウォーキー」というビールのコマーシャルで、日本でも有名になったミルウォーキーは、いわずと知れた、アメリカ一のビールの産地である。

コマーシャルを見るまでビールの産地だとは知らなかった私は、ミルウォーキーが州都マディソンのすぐ近くにあるにもかかわらず、なかなか訪れる機会がなかった。ところがいったん知ってしまうと、どうしても本場のビールの味を試してみたくなってしまい、いてもたってもいられない。そこでマディソンのキャンプ場にトレーラー式のキャンピングカーをおいて、日帰りで出掛けてみることにした。

ミルウォーキーへ向かう途中のミシガン湖畔は、高層ビルが立ち並ぶ近代的なビジネス都市。そしてその後ろ側に隠れるようにしてあるのが、バドワイザー、ミラーなど、日本でも飲まれている有名なビールの工場群だった。アメリカでは、ビール見学ツアーに参加すると、どこの工場でもたいてい無料のビアホールが内部にある。ならんでいるビールの銘柄の看板を見ていると、どのビールから飲もうかと、目移りしてしまい、順番を選ぶのも大変だ。

何軒も工場を回るということは、何軒もビヤホールをはしごするのと同じことになってしまうので、帰りは飲酒運転になってしまう。州の入り口で見た、酔っ払い運転取締の標識も頭に浮かび、飲みたいビールの工場は早目に回り、後半は飲まないことに決めた。結局、一番古そうで趣のある工場のパブスト社と、日本でもよく買って飲むほど好きな、ミラー社の工場から回ってみることにした。

ドイツ風のどっしりした外観が迫力たっぷりのパブスト社では、ツアー参加者の待合室で二十人位のグループに分けられ、グループごとにPR担当の社員がガイドしてくれるシステム。コンピューターによる温度管理以外は、昔ながらの伝統的な技法で作られる工程を自慢げに教えてくれた。最後に案内してくれた自社ビールのビアホールでは、みんなおいしそうに出来たての生ビールを飲んでいる。私もここぞとばかり一気飲みだ。

次に訪れたミラー社は、パブスト社に比べるとぐっと近代的な設備を備えた工場だが、最後に着いたビアホールは、今まで回ってきた、新しくて近代的な製造工程の現場とは正反対、まるでドイツのお城のような雰囲気だ。ビアホールで一家揃ってビールを飲んでいる姿を撮影しようとカメラを向けると、腕に抱かれた赤ちゃんがおいしそうにミルクを飲んでいる。その姿はまるで「ウィスコンシン州はビールだけじゃなくてミルクもたくさんとれるのですよ」といっているようだった。

建築技術が進んでいるウィスコンシン州の州議会。「ゾーニング」という建築基準法などもここで制定された。

「ビール・キャピタル・オブ・ザ・ネーション」といわれる、ミルウォーキーのダウンタウン。ミシガン湖畔はアメリカ・ビールの故郷だ。

ウィスコンシン州は、ミルウォーキーのビールだけではなく、アメリカを代表する酪農の州でもある。チーズは全米の全消費量の35%、牛乳は17%の生産量を誇る。

州都マディソン郊外に広がる裕福なウィスコンシンの農場。

「大草原の小さな家」を思わせる、牧歌的な農場の風景。

ミシガン湖は、ミルウォーキー住民にとってなくてはならない存在だ。湖畔の昼休み。

ウィスコンシンの人々が自慢する奇岩、「ウィスコンシン・デルス」は船で訪ねる。

ドイツからやってきたビール作りの伝統は今でもかたくなに守り続けられている。ミルウォーキーにあるパブスト・ブリューワリーのビール工場。

最終工程でアルミの缶に詰められたビールは、箱詰めされて出荷を待つ。パブスト社。

「シャンペン・オブ・ビヤー」というニックネームを持つミラー社のビールは、日本のビールに近い味をしている。私がアメリカでビールを注文するときは「ミラー・ライト」一本槍だ。

伝統的な手作りの工程を大切にするパブスト社の工場も、裏方さんはコンピュータ・コントロール。

見学ツアーの目玉はやはり昔の工場。イメージ効果を狙って、今でも当時のまま、大事に保存してある。

ミルウォーキーの観光はビール工場巡りが一番だ。ほとんどの工場が見学ツアーを実施している。中には無料のビアホールもあるのだ。

ミラー社の工場にあった、代々使ってきたビールの看板のコレクション。

ミラー社の見学ツアーの最後はビアホール。「ミラー・イン」という名前がつけられたビアホールは、古いドイツのお城のイメージを残している。

パブスト社の広告キャンペーン。古さだけでなく、新しい感覚も大切にしている。

「ミラー・イン」内のビアホール。ここを訪ねると、まるでドイツのビアホールにやってきた雰囲気が味わえる。

「オン・タップ」と呼ばれる樽から、出来たての生ビールをジョッキについで持ってきてくれる味は、格別だった。

パブスト社のビアホールで、工場見学の最後に一杯。全米のミルクの17%はこの州で生産されている。

東京の帝国ホテルの設計で有名なフランクロイド・ライトの建築学校がアリゾナ州と、ここウィスコンシン州にある。彼は、冬はアリゾナ、夏はウィスコンシン州で生活をしていた。

学校の入り口の門の所には、ライト自身のデザインによる表札がある。見方によってはなんとなく日本的だ。

酪農の州ウィスコンシンでは、乳牛のためのおいしいコーン畑もたくさんある。マディソン郊外のコーン畑の向こうに見つけた、フランクロイド・ライト設計の住宅。

マディソン郊外で見つけた不思議な建築物。巨大な岩の上に建てられたものだというのだが、外観はまったく見えず、最上階の両端が角のように張り出している。「ハウス・オン・ザ・ロック」。

ハウス・オン・ザ・ロック。いったん中に入ると、すべての部屋を通らないと外に出られない仕組みになっている。

ハウス・オン・ザ・ロックの中は、博物館にもなっている。有名な「ティファニー・グラス」の電気スタンド。

アメリカ文化のコレクションをしているハウス・オン・ザ・ロック。メリーゴーランドもあった。

ハウス・オン・ザ・ロックの最上階へいくまでには、いくつもの小部屋を通らなければならない。それぞれの部屋自体がコレクションになっている。メリーゴーランドの部屋。

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