オハイオ州北部の四つの工業都市

古くから工業の州として栄えてきたオハイオ州。その代表的な工業都市の多くは、セントローレンス川や五大湖の水運を利用することができる、エリー湖の近くに集中している。その中の、クリーブランド、アクロン、トレド、コロンブスの各都市を訪ねてみた。

オハイオ川とミシシッピー川をつなぐオハイオ運河をもつクリーブランドは、これによって、石炭、鉄鋼石を中心とする重工業地帯の基礎を固めた。その後、石油王、ロックフェラーが経営するスタンダード石油の本社が進出、その地位が確立したのである。

隆盛を誇ったこの町も、1970年代に入り、南部や西海岸への企業の流出とオイルショックによる落ち込みは、ほかの都市同様かなりのものだったようだ。この町では、この窮地を乗り越えるため地元企業の代表五十社が集まって、「クリーブランド・トモロー」という大プロジェクトを開始したのだ。

使われていない発電所跡をショッピング・センターにつくりかえたり、エリー湖から入ってくる船の見える川の両側に、」ザ・フラッツ」という、美しい町並みをつくったり。腎臓移植や心臓手術の技術がが進んでいることを利用して、医学関係の博物館も建設した。こうした住民達の地道な努力のお陰で、観光客も増えつつあり、少しづつではあるが昔の活気を取り戻してきているようだ。

最近、日本のブリヂストンが買い取ったことで有名になった、アメリカ有数のタイヤ・メーカー、ファイヤーストーンの本拠地アクロンは、オハイオ・エリー運河の近くにある都市だ。「ラバー・キャピタル・オブ・ザ・ワールド」と呼ばれてきたゴム産業の町アクロンにとって、ファイヤーストーンの身売りは、工業都市としての衰退をあらわす、象徴的な出来事だった。

ファイヤーストーンでは、工業にかわる資金源として、観光都市としての面をアピールしようとしているようだ。その目玉的存在なのが、世界的に有名なファイアーストーン・カントリー・クラブである。観光客がプレイに興ずる一方で、アクロンの地元の市民も地元の再興のためとばかり、このゴルフ場で積極的にプレイをしている。

19世紀末にはアメリカを代表するガラス工業の町だったトレドは、近郊のデトロイトで作られる自動車のウインドを供給することで発展していった。また、ウインドだけでなく、自動車本体の製造も手がけるようになる。軍用の4輪駆動車として生まれたジープは、ここで生産されている。

しかし、今やアメリカの自動車産業は斜陽。繁栄を誇ったであろうトレドも、かつての賑わいはない。ガラス・コレクションで世界的に有名なトレド美術館の辺りでは、そうした雰囲気が色濃く映し出しているようだ。

ただ、トレド美術館から少し離れ、エリー湖に流れ込むマウミー川に面したサマーストリートまで来ると様相は一変する。そこはトレド市民が週末を楽しむためのレジャー地区として、自動車産業の町とは別の顔が見えるのだ。

州都コロンブスは、デトロイトやトレドに変わる新たな自動車産業都市として台頭してきた。その理由は、日本の自動車メーカーが本格的な自動車工場を郊外のメアリースビルに建設したためだ。このおかげでオハイオ州は、自動車生産量ではミシガン州に次ぐ全米第2位の地位を獲得するまでに至った。

オハイオ州の人々は、地元オハイオ州で生産されるホンダ車を「メイド・イン・オハイオ」と呼び、他の都市で生産されるメイド・イン・USAアメリカの車よりも品質が良いことを自慢している様子だった。

エリー湖に流れ込むクヤホガ川の流域に広がるクリーブランド市は、製鉄会社や大手石油会社が本社を構えていた重工業都市。

クリーブランド市のマリーナの向こう側に、五大湖のひとつであるエリー湖が見える。クリーブランドは、エリー湖畔に開けた工業都市の代表格だ。

クセホガ川河畔の発電所跡地を利用した「ナウティカ・パワーハウス」は、「ザ・フラッツ」の再開発の核になる建物だ。大きな貨物船が川幅いっぱいに行きかう姿を眼の前で眺めながら食事をするというのが、クリーブランドの流行の最先端だ。

ザ・フラッツの景色。上方にはメイン・アベニュ・ブリッジが見える。クリーブランドは橋の町ともいわれている。ザ・フラッツも、橋を上手に取り入れた町づくりが考えられているようだ。

湖畔を走る鉄道橋は、エリー湖からの船が通れるように開閉式になっている。

クリーブランド市民の間で一番人気のスポーツは「ローウィング」

トレドのマウミー川に面したサマーストリート一帯は、すっかり変身。

トレド市民の週末。湖や川にボートを浮かべてレジャーを楽しむ。

トレド・ミュージアム・オブ・アート、トレド美術館。ここにあるガラス・コレクションは、ガラスの町、ニューヨーク州コーニングにあるコーニング・ガラス・センターのものにも匹敵する。

オハイオ州の中央部、オハイオ川支流のスシオト川河畔にある州都コロンブスは、州政治の中心舞台。コロンブス市民は、町をあげて再開発に積極的だ。

グリーク・リバイバル様式が特徴の州都コロンブスの州議事堂。

コロンブス市郊外のメアリースビルにあるホンダの乗用車組立工場。アメリカで初の本格的な乗用車組立工場として建設された。

ホンダの組立工場のあるメアリースビルの町並み。典型的なオハイオの中小都市の面影を残す目抜き通り。

オハイオ州内はすべてが工場地帯かと思うとそうでもない。工場地帯の都市と都市の間には、のどかな農村地帯も広がっている。

ちょうどハロウィーンの季節。昔ながらの農家のポーチの前には、ハロウィーンのデコレーションが施されている。

アクロンにあるファイヤーストーン・カントリー・クラブの3番ホール。

アメリカの自動車タイヤ・メーカーの名門、ファイヤーストーン社は、本業の傍らファイヤーストーン・カントリー・クラブも所有している。しかし、ファイヤーストーン社が日本のタイヤ・メーカーのブリヂストンに買収されたため、ゴルフに興ずる人もゴルフ場経営の行方が気になるようだ。

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